「鎌倉からプロバスケットボール選手を!」地域に根差したクリニックが持つ価値

AI要約

国内のバスケットボールクリニックが開催され、著名な選手やコーチが参加。地元の子どもたちにバスケットボールの指導を行う。

クリニックは、地域のバスケットボール普及を目指す取り組みで、11回目の開催を迎え、規模や参加者数が増えている。

バスケットボール漫画「SLAM DUNK」の影響で競技人口は増加しているが、育成面の課題もある。地道な活動が強化の基盤として重要。

「鎌倉からプロバスケットボール選手を!」地域に根差したクリニックが持つ価値

パリオリンピックの日本代表の戦いが佳境を迎え、国内ではインターハイ開幕というタイミングの8月3日と4日、神奈川県鎌倉市にある三菱電機鎌倉体育館ではとあるクリニックが開催されていた。主催は鎌倉市スポーツ協会と鎌倉市バスケットボール協会。そこにコーチ役として登場したのは横浜ビー・コルセアーズの森井健太と杉浦佑成、横浜エクセレンスの西山達哉と増子匠、3×3チームTONO VALKYRIESの石川麻衣、さいたまブロンコスの柴田雅章U15ヘッドコーチ、そして東京ユナイテッドバスケットボールクラブの宮田諭と小倉渓、今林萌、田村亜有ヘッドトレーナーという面々だ。

午前の部が小学生女子全学年と男子1・2年生対象、午後の部が中学・高校生対象となった2日目は、柴田コーチの指導を中心としつつ、リズムトレーニングや田村トレーナーによるストレッチなどバスケットのプレー以外の指導も多岐にわたり、即席で指導者向けのテーピング講座も実施。前日より蒸し暑く、空調設備のない体育館で誰もが大粒の汗を流す中ではあったが、中身の濃いものとなった。指導を受ける子どもたちにも、選手たちに質問したり1on1の対決を挑んだりと、前のめりな姿勢が見られ、活況のうちに全行程を終えた。

このクリニックは、鎌倉市バスケットボール協会副会長兼事務局長の上林裕和がその中心的役割を果たしている。自身が熱中してきたバスケットを、生まれ育った街で盛んにしたいという想いが、様々な障壁を乗り越えさせているということだ。

「僕自身は何かを成した人間ではないですが、この鎌倉を根城にして高校までバスケットをやってきて、協会の仕事も手伝ったり、20代後半くらいには宮田さんの大先輩の東野(智弥、現JBA技術委員長)さんとの出会いもあったりして、そんな中で『バスケットの育成はこれでいいのかな』というところから、小学校のチームの指導を始めたんです。20年以上経って、その間に宮田さんも含めていろんな出会いに恵まれたので、それを地域に還元したいと思ったんです。鎌倉は2面取れる市の体育館がなくて、バスケットをやる環境がないと言われてたんですが、環境がないからできないわけではないと思って、いろんな人の力を借りながらここまで続いてます。2日間やるのって大変だし、初期の頃は宮田さんに選手を集めてもらって、選手たちもいろいろキツいと思うので本当に申し訳ないんですが、地域の子どもたちにバスケットを根づかせるという、協会の中でも一番大きなイベントなので、『子どもたちに何か残っていればいいな』という、その一心ですね」

今回の開催が11回目。大々的に告知されるわけでもなく、手作り感のあるクリニックだが、回数を重ねて定着すると同時に、規模も着実に拡大している。

「地域からバスケットを盛り上げていきたいというときに、いろんな人の力を借りて、刺激を入れながらやっていけたらいいなという点では、こういうイベントができるのは本当にありがたいです。最初は子どもたち50人くらいでスタートしたと思うんですが、市内にチーム数が増えて、参加する子どもたちも増えてきて、今は2日間で200人くらい来てくれるようになって、この地域もバスケットをやってくれる子が増えたんだなと感じます」

漫画「SLAM DUNK」の舞台が神奈川県であることはよく知られているが、その影響で競技人口が増えても、育成面が県内全域で充実しているかというと、必ずしもそうではないとのこと。漫画のファンの間で有名なスポットがある鎌倉市も、チームは小・中学ともに市外に出るとなかなか上位に進出できないのが現状だという。そんな中で、こういった地道な活動が基盤にあることは強化の第一歩となるだろう。