M9点灯の巨人が陥る〝星勘定のわな〟 伊勢孝夫氏が「阪神V本命」を強調する2つの理由

AI要約

阪神は中日戦で8-3で完勝し、神撃の5連勝を達成。巨人に1.5ゲーム差で肉薄し、大逆転Vへの望みをつないでいる。

阪神は選手一人ひとりが自身の役割を理解し、効果的に遂行しており、特に9回の攻撃で大山のバッティングが勝利につながった。

巨人にはマジック9が点灯したが、評論家はこの数字の意味を疑問視し、阪神のチームコンディションとリーダーシップに注目している。

M9点灯の巨人が陥る〝星勘定のわな〟 伊勢孝夫氏が「阪神V本命」を強調する2つの理由

 阪神は18日の中日戦(バンテリン)に8―3で完勝し神撃の5連勝。首位・巨人に1・5ゲーム差と肉薄し、大逆転Vへの望みをしぶとくつないだ。この日巨人にはマジック9が点灯したが、本紙評論家の伊勢孝夫氏は「この時期、このゲーム差におけるマジック点灯にさほどの意味はない。むしろ、巨人が〝星勘定のわな〟に陥る可能性がある」と持論を展開した上で「チームコンディションで上回っているのは阪神。選手それぞれが自身の役割を全うできている」との見解を示した。

【新IDアナライザー・伊勢孝夫】やはり阪神は強い。選手それぞれが、場面場面で自身がなすべきことを理解した上で遂行できている。それを特に強く感じたのは、4―2の僅差リードで迎えた9回の攻撃。一死一、三塁で打席に入った大山のバッティングだ。

 阪神としては戦局を決定づける追加点が欲しい場面。逆に絶対にやってはならないのは5―4―3、6―4―3などの併殺打だ。大山はカウント2―2から内角を厳しく突かれた152キロ直球を無理やり右方向へ運び適時右前打。本来の彼なら左へ引っ張りたいコースだったろうが見事に対応した。相手一塁手は塁に張り付いているため、一、二塁間は広く空いている。このコースに打球を飛ばせば、併殺打になる可能性は低く、最低でも「ゲッツー崩れ」で1点が入るという算段だったのだろう。数字には表れない大山の打者としての能力の高さを感じることができた。

 難敵・高橋宏を〝普通に〟攻略できたのも納得がいく。「一つも負けられない」切迫した状況でこれだけの野球ができているのは昨季球界の頂点に立った経験値がモノをいっているのだろう。森下、佐藤輝も複数安打をマークするなど好調。石川、細川と右打者から始まる中日の6回の攻撃を岡留、島本の2枚で防ぎ切った岡田監督の継投策も理にかなっていた。決断に迷いを感じさせないのは、事前のゲームプランニングが十分にできている証左だ。

 この日、巨人にマジック9が点灯したが、ゲーム差、残り試合数を考えれば何の意味もない数字だと私は捉えている。むしろ巨人ベンチとナインがマジックの点灯により〝星勘定〟を必要以上に意識し、追われる身のつらさも相まって動きが硬くなってしまう可能性すら高い。私も現役選手、打撃コーチとしてそのような局面を敵味方問わず何度も見てきた。

 その点、阪神は岡田監督も選手たちも「目の前の試合」に集中できていることが、この日のゲームからもよく伝わってきた。投打のバランス、選手のコンディションも巨人を上回っているし、何よりも経験豊富な〝独裁者〟岡田監督の強烈なリーダーシップが頼もしい。最後の最後までTG両軍のデッドヒートは続くだろうが、私の予想する優勝チームが阪神であることにまだ変わりはない。

(本紙評論家)