「お前、125キロの直球でどう戦うんだよ…」じつは大社高・石飛監督も半信半疑だった「先発、馬庭じゃないよ!」甲子園がざわついた決断…監督が語るウラ側

AI要約

島根県立大社高校が夏の甲子園で驚異的な活躍を見せた後の様子が描かれている。校長や選手のコメントから、大会での感動や困難が伝わってくる。

石飛監督が試合での戦術や選手との関係について語り、自身の采配ミスについても率直に述べる。監督と選手が連携を図りながら戦っている姿が浮かび上がる。

彼らの活躍は草野球チームのような連携と努力を感じさせるものであり、地元のファンやサポーターからも多くの支援を受けている様子が伝わってくる。

「お前、125キロの直球でどう戦うんだよ…」じつは大社高・石飛監督も半信半疑だった「先発、馬庭じゃないよ!」甲子園がざわついた決断…監督が語るウラ側

今夏の甲子園を最も驚かせた島根県立大社高校。あの「大社旋風」が終わってから数日後、筆者は島根県出雲市の大社高校を訪れた。【全2回の前編/後編も公開中】

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 島根県北東部、日本海側に鎮座する出雲大社から内陸方向へ車で5分ほど。出雲市大社町にある公立高校の入口付近、学校銘板の横で観光客と思しき家族が記念撮影をしていた。

 大社高校が神村学園に敗れた準々決勝から3日が経った。8月22日は同校の始業式の日である。ジャージ姿の石飛文太は、グラスにアイスコーヒーを注ぎながら、感慨深げに言う。まるで、はるか昔に起きた奇跡を回想しているかのような口調だった。

「学校に寄付したいという方々が今も頻繁に来てくれているらしいんですよ。“追い寄付”です。なにせ甲子園で19泊20日しましたから、その分を補うためにって。本当にありがたいことです」

 今夏の甲子園、初戦でセンバツ甲子園・準優勝の報徳学園を、2回戦でタイブレークの末に長崎の強豪・創成館を、3回戦で再びタイブレークの末に早稲田実を下した。想定していた期間も予算も超えた甲子園滞在――「大社旋風」を当事者が強く体感したのは、実はそんなところだった。

 延長11回のタイブレークをサヨナラで勝ち抜いた早稲田実戦後、石飛は相手の監督、和泉実に声をかけられた。ひと言、「強い!」と。本や新聞記事で幾度となく目にしていたあの名将から……そんな感慨はあったが、石飛の内心はこうだった。「うちは強く……ない」。その思いは最後まで変わらなかった。

「ひとつだけ明らかなことは、僕らみたいな格下が安牌で戦っていたら勝てるわけないじゃないですか。初戦の報徳との試合で、先頭バッターの藤原がライト前ヒットで二塁までいったでしょう。内心は『いくんかーい! そしてアウトになるんかーい! 』って思ってたけど、あの感じです。終始、攻めることはできていた。格下は攻めの姿勢がなければ、まず戦えません」

 石飛の言葉に徐々に力がこもりはじめる。

「うちには優れたアナライザーも、采配で勝たせられる名将もいない。もっと言うと、これまで僕の采配ミスで負けてきました。選手たちに聞いてみてください。謙遜でもなんでもなく事実です。だから彼らは、僕の采配を信頼していなかった。ひしひしと感じるんですよ。そこで打たすんかい、バントかい、走らすんかい、みたいな冷たーい視線を。それが嫌だから、基本的にサインを出す前にベンチの選手に聞くんです。『ここどうする? 』『バントにする? それとも打つ? 』って」

 まるで草野球チームのようではないか。監督と選手が相談して采配を決める。それも42歳の監督が18歳の高校生に、である。本当だろうか。