新しいユニフォーム姿の広陵が熊本工との伝統校対決を制す 大エースが見せたトップギア【甲子園2024】

AI要約

第106回全国高校野球選手権大会の名勝負、熊本工対広陵の試合を振り返る。

広陵のエースである高尾響が逆転勝利を収め、広島弁で喜ぶ監督の姿も印象的。

広陵が25回目の夏の甲子園出場で熊本工を破り、中井監督が40勝目を達成した。

新しいユニフォーム姿の広陵が熊本工との伝統校対決を制す 大エースが見せたトップギア【甲子園2024】

2024年、夏。今年も甲子園で高校球児たちの熱戦が繰り広げられている。第106回全国高校野球選手権大会の名シーン、名勝負を振り返る。今回は、8月12日の熊本工(熊本)-広陵(広島)について。

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「序盤のギアは2速ぐらいだったんでしょうね」

 広陵の先発右腕である高尾響のピッチングを、熊本工の田島圭介監督はそう評する。制球の甘さ、ちょっとした隙を逃さずに主将で5番の浜口翔太が右中間へ二塁打。2死三塁から、先発マウンドも担った8番山本凌雅の中前適時打で熊本工が1点を先制したのは5回裏だ。だが、高尾のピッチングが尻上がりによくなっていくのがわかる。7回表に逆転を許した熊本工は、終盤に入ると広陵の大エースを打ち崩すことができなかった。田島監督の言葉だ。

「どっしりとピッチングをさせたくなかったんですが、高尾くんは全然慌てなかった。エンジンをどんどんと加速させてしまった」

 1年春からエースナンバーを背負い、今夏で4季連続の甲子園出場となる高尾は、広島大会で苦しんだ。

「投げ方がバラバラで制球が定まらなかった。県大会後に右足の上げ方や並進運動の部分を見直して投球フォームを修正しました」

 状態が上向きだった高尾は、慣れ親しんだ聖地のマウンドで蘇った。1点差の9回裏。内野の失策と中前安打、さらに犠打で1死二、三塁とピンチを迎えた場面で、高尾のピッチングはトップギアに入った。146キロのストレートで見逃し三振。そして、最後の打者は3球で空振り三振に仕留めるのだから、余力は残っていただろうか。ショートでスタメン出場の酒井綾希人は、高尾の後ろ姿が頼もしかった。

「ピンチの場面でギアを上げるのが高尾。最終回はさすがです」 

 広陵の中井哲之監督は「ヒビキが粘り強く投げてくれた」と言い、伝統校対決を制して「広島弁で言うと、ぶち嬉しいです」と笑った。

 今夏の甲子園大会から、広陵は暑さ対策のためにホワイトカラーの帽子とアンダーシャツを取り入れた。夏の甲子園出場が25回目で過去に4度の準優勝を誇る広陵が、出場23回目にして3度の準優勝経験を持つ熊本工を新しいユニフォーム姿で破った。中井監督が、再び白い歯を見せる。

「白にして負けると何を言われるかわからなかったので、白で勝ててよかった」

 中井監督にとっては、歴代7位となる甲子園春夏通算40勝目である。

(佐々木 亨)

※AERAオンライン限定記事