「攻めのレスリングだよね」 試合ごとに父に確認 親子の絆で金メダル レスリング女子の藤波朱理

AI要約

20歳の藤波朱理が、レスリング女子53キロ級で金メダルを獲得し、父と喜びを分かち合った。

藤波は公式戦連勝記録を137に伸ばし、昨年の対戦で10-0のテクニカルスペリオリティー勝ちを収めた。

父であるコーチと共に夢を追い、藤波はオリンピックの舞台で自信を示し、父に感謝の言葉を述べた。

「攻めのレスリングだよね」 試合ごとに父に確認 親子の絆で金メダル レスリング女子の藤波朱理

初出場の五輪、その決勝の舞台でも圧倒的な強さを見せつけた。8日(日本時間9日早朝)に行われたパリ五輪のレスリング女子53キロ級で藤波朱理(あかり、20)が金メダル。中学2年時から続く公式戦連勝記録を137に伸ばし、二人三脚で戦ってきたセコンドの父と喜びを分かち合った。

面白いようにタックルが決まり、昨年の対戦では7ポイントを失ったエクアドル選手を相手にポイントを重ね、10-0と10点差を付けたことによるテクニカルスペリオリティー勝ち。日の丸を持ってマットに上った父、俊一(としかず)さん(59)に駆け寄り、飛び上がって抱きついた。

「オリンピック最高!レスリング最高!」

直後のインタビューで喜びを爆発させた藤波。その後、父への思いを口にした。「本当にぶつかり合うこととか、けんかすることも多かったんですけど、父がいなかったらここにはいない。一番感謝したい存在です」

三重県四日市市の出身で、4歳で競技を始めたときから俊一さんがコーチとして指導。令和4年に藤波が日本体育大に入学する前年には、俊一さんも地元の高校教員の職を辞し、1年契約で給料も半分の日体大のコーチに。ともに上京し「五輪で金」という子供の頃からの夢を追ってきた。

自信を胸に臨んだパリ大会。全4試合で試合時間の6分間を戦い切ることなく勝利したが、父の目には今までにない姿も映っていた。「自分のレスリングをやればいいんだよね」「攻めのレスリングだよね」。毎試合、自分に言い聞かせるように俊一さんに確認。「初めての舞台で不安がないわけじゃない。最後はメンタルなので、『大丈夫、大丈夫』と送り出した」と振り返る。

表彰式で藤波は、首にかけられた金メダルを少し持ち上げて見つめ、大事そうにそっとなでた。2人で目指してきた頂き。俊一さんは「やっと夢がかなった。実現してくれてありがとうと伝えたい」と話した。

藤波を支えたのは父だけではない。自身もレスリングの有力選手だった兄の勇飛(ゆうひ)さん(28)のもとには、藤波が五輪代表に決まるまで、弱気な電話がかかってくることもあった。「真摯(しんし)に競技に向き合う朱理を人として大尊敬しているけれど、普段はキュートで普通の女の子。周りが思っている以上のプレッシャーがあったと思う」

準決勝後には「楽しんできて。楽しんだやつが一番上に立っているよ」と電話で伝えた勇飛さん。妹の雄姿を日本から見届け、「レスリングはオリンピックだけが人生を変えられる場所なので、全員が死に物狂い。その中でも楽しんでいる顔をして、何より強すぎた。これからも日本を元気づけるような存在になると思う」と喜んだ。(西山瑞穂)