【陸上】田中希実「頑張ったから運が巡ってきたのかな」救済措置で一転準決勝進出 女子1500m

AI要約

21年東京五輪女子1500メートル8位入賞の田中希実が、パリオリンピックの同種目予選に臨み、救済措置によって準決勝に進出した。

田中は5000メートルでの予選敗退後、意味を見つめ直し、前進する姿勢を示した。

田中は日本記録更新を目指して準決勝に挑戦し、幸せを感じながら走ることを誓った。

【陸上】田中希実「頑張ったから運が巡ってきたのかな」救済措置で一転準決勝進出 女子1500m

<パリオリンピック(五輪):陸上>◇6日◇女子1500メートル予選1組◇フランス競技場

 【パリ6日=藤塚大輔】21年東京五輪女子1500メートル8位入賞の田中希実(24=ニューバランス)が同種目予選1組に臨み、救済措置によって準決勝に進出した。4分4秒28で11着に終わり、予選突破条件の組6着以内に入れなかった。7日の敗者復活戦に回るはずだったが、レース中に他のランナーと接触したことで救済された。本命種目だった2日の5000メートルで予選敗退。中3日のレースで積極的な走りを披露。走ることの意味を見つめ直した。

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 号砲が鳴る。大外から走り出した田中は、すっと前へ出た。同組唯一のアジア勢のランナーが、14人の海外選手たちの先頭へ。2位との差を引き離していくと、7万7000人の観衆の大歓声が響いた。「大切なことをたくさん思い出した上で走り出した」。4日前はどん底だった。

 2日の5000メートル予選。「走ってもいないのに満足してしまっていた」。4年に1度の大舞台を前に、五輪までの道のりに浸っていた。5月下旬に5000メートルの五輪参加標準記録を突破。6月に自身4度目のケニア合宿を敢行し、7月中旬のダイヤモンドリーグ(DL)モナコ大会では今季自己最高の14分40秒86で3位に入った。

 世界で戦う術(すべ)を身に付けつつあっただけに「向かってきた時間だけで幸せになっていた」。ただ、結果は予選敗退。「普通に通れる」との見立てが崩れると、「幸せは自分だけで完結するものではない」と気付いた。

 田中にとって喜びとは、人と走り、その高揚感を共有することにあった。競技会では高校生が相手であっても「ライバル」と見立てて全力で挑んだ。ケニアでは現地選手と一緒に舗装されていない道を走ってきた。だからこそこの日は「悲壮感に満ちた走りではなく、たくさんの人が走ってくれている」と原点に立ち返り、スタートから勝負を仕掛けた。

 800メートル付近で集団に吸収されて最後の1周で次々と追い抜かれていき、残り200メートルでは後方の選手と接触。11着に終わったが、レース後に救済措置が告げられた。「頑張ったから運が巡ってきたのかな」。8日の準決勝では自身の日本記録(3分59秒19)更新を目指す。目を真っ赤にしながら誓った。「今日は日本記録と思っていた。それができなかった分、『やれ!』と言われているような気がする」。ただただ、幸せをかみしめながら走る。