サニブラウンの陸上男子100m準決勝敗退と、人類の文明の進歩

AI要約

パリオリンピック(五輪)陸上男子100メートル決勝は、上位7着までが写真判定という異例の決着になった。

2着にわずか1000分の5秒差の9秒79でノア・ライルズ(米国)が金メダルを獲得したが、驚いたのは8着の9秒91。これは前回の4着、前々回の銅メダルに相当する。超ハイレベルのレースは、この種目が新たな次元に入ったことを示している。

さらに衝撃は準決勝を9秒96で走ったサニブラウンの落選だ。過去の五輪は9秒台で走れば確実に決勝に進出できた。準決勝でもっとも速かった8番目の記録は21年東京大会の10秒00で、9秒96は5番目のタイム。それが今回、決勝に残った8番目の記録は、9秒93まで上がっていた。

9秒58の世界記録保持者で、9秒63の大会記録を持つ五輪3連覇のウサイン・ボルト(ジャマイカ)は、196センチの規格外の身体能力を持つ超人で、レースでは彼一人“別格”だった。今回の記録もボルトにはまだ及ばないが、ボルト時代よりもトップレベルの選手層は格段に厚くなった。

 パリオリンピック(五輪)陸上男子100メートル決勝は、上位7着までが写真判定という異例の決着になった。

 2着にわずか1000分の5秒差の9秒79でノア・ライルズ(米国)が金メダルを獲得したが、驚いたのは8着の9秒91。これは前回の4着、前々回の銅メダルに相当する。超ハイレベルのレースは、この種目が新たな次元に入ったことを示している。

 さらに衝撃は準決勝を9秒96で走ったサニブラウンの落選だ。過去の五輪は9秒台で走れば確実に決勝に進出できた。準決勝でもっとも速かった8番目の記録は21年東京大会の10秒00で、9秒96は5番目のタイム。それが今回、決勝に残った8番目の記録は、9秒93まで上がっていた。

 重圧と緊張の舞台でサニブラウンは自己ベストを100分の1秒更新した。強い精神力と、米国を拠点に世界トップとしのぎを削ってきた経験の成果だろう。ただ、100分の1秒更新するのに5年もかかっている。「世界はもっと先に行っている。ちょっとずつ追いつくのでは足りない」という本人の言葉は“世界の現実”を表している。

 9秒58の世界記録保持者で、9秒63の大会記録を持つ五輪3連覇のウサイン・ボルト(ジャマイカ)は、196センチの規格外の身体能力を持つ超人で、レースでは彼一人“別格”だった。今回の記録もボルトにはまだ及ばないが、ボルト時代よりもトップレベルの選手層は格段に厚くなった。

 グローバル化で海外で学ぶ機会が増え、最先端のスポーツ科学やトレーニング方法、栄養学などの情報を世界中の選手が共有できるようになったことも要因だろう。

 カリブ海に浮かぶ人口18万人の島国セントルシアに同国初のメダルをもたらした、女子100メートル金メダルのアルフレッドも、ジャマイカに移住して才能を開花させた。

 60年のシューズのオーダーメード化で記録が向上し、全天候型のトラックが導入された68年には、メキシコシティー大会でジム・ハインズ(米国)が五輪史上初の9秒台となる9秒95をマークして、新たな時代に突入した。パリ五輪もそんな歴史のページを開く大会になったのかもしれない。

 陸上の100メートルの記録は、選手の身体や技術だけではなく、シューズの軽量化や、トラックの改良、そしてスポーツ科学・医学の進歩などあらゆる要素の結晶でもある。人類の文明が一歩前に進んだ。パリ五輪の男子100メートル決勝はその証しでもあるのだ。【首藤正徳】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「五輪百景」)