フランス初優勝を可能にした「運営」とチャンピオンズカップ準優勝チームの「個人教授」【欧州サッカークラブの「育成部門」は高校の部活】(1)

AI要約

フランス代表が1998年のワールドカップで初優勝した背景には、若手選手の育成に成功した取り組みがあった。

サンテティエンヌなどのクラブでは選手たちが寝泊まりし、教育も兼ねた環境で育成されていた。

選手たちの両親も安心して息子をクラブに預けられるシステムが整っていた。

フランス初優勝を可能にした「運営」とチャンピオンズカップ準優勝チームの「個人教授」【欧州サッカークラブの「育成部門」は高校の部活】(1)

 蹴球放浪家・後藤健生がカバーするフィールドは広い。ワールドカップも取材すれば、若手の育成にも目を向ける。強い代表チームやクラブが生まれるには、それなりの理由があるのだ。

 25年くらい前にヨーロッパ各国のサッカークラブの取材をしていた時期がありました。

 最初に取材に行ったのはフランスでした。

 フランスは1998年に自国で開催したワ-ドカップで初優勝しましたが、それが可能になったのは若手選手の育成に成功したからです。

 クラブチームは大金をはたいて外国人選手をかき集めれば強化することができますが、代表の場合は自国で選手を育てるしかありません。日本代表が強くなったのも、選手の育成に成功したからにほかなりません。

 フランスではサッカー連盟(FFF)がクレールフォンテーヌに有名な研修センター(INF)を立ち上げ、各クラブもアカデミーに力を入れました。そうした努力が実ってワールドカップ初優勝につながったのです。

 そこで、ワールドカップの翌年、1999年にフランスのクラブで育成部門がどのように運営されているのかを見に行ったのです。

 まず訪れたのがASサンテティエンヌ。1960年代、70年代にはフランス・サッカ-は低迷していましたが、サンテティエンヌは1975/76年シーズンにチャンピオンズカップで決勝進出に成功。決勝戦でバイエルン・ミュンヘン(西ドイツ)に敗れたものの、サンテティエンヌは全国区的な人気を集めるようになりました。

 サンテティエンヌではユース年代の選手たちが研鑽に励むグラウンドを見学し、彼らが寝泊まりしている宿舎も案内してもらいました。

 選手たちはクラブの宿舎に寝起きしています。今ではJリーグクラブでもトレーニング施設が整ってきていますが、2003年当時の日本のクラブとは比べ物にならないような設備でした。

 そして、選手たちは地元で提携している高校に通ったり、クラブハウスの中でクラブが雇っている教師たちから授業を受けて大学受験資格を取るのです。

 ヨーロッパでは、日本のように誰でもが大学に行くわけではありません。大学受験資格を得て大学に進学できれば、それはある一定の社会的地位を得ることを意味します。つまり、たとえプロ選手になれなくても、ハイレベルの教育を受けることができるのです。だからこそ、選手たちの両親は安心して息子をクラブに預けることができるというわけです。