【スケボー】14歳吉沢恋「私にもチャンスが?」東京五輪見て可能性に気が付いた世界一の夢実現

AI要約

14歳の吉沢恋がパリオリンピックで女子ストリート決勝で金メダルを獲得した。

彼女は家族の支えのもと、厳しい練習を重ねて念願の栄冠を手に入れた。

彼女は自己2番目の高得点を記録し、家族やファンを喜ばせる滑りを今後も追求する決意を示した。

<パリオリンピック(五輪):スケートボード>◇28日(日本時間29日)◇女子ストリート決勝◇コンコルド広場

 世界ランク1位で14歳の吉沢恋(ここ、ACT SB STORE)が金メダルを獲得した。

 銀メダルの15歳赤間凜音(りず)とともにワンツーフィニッシュを飾った。45秒間で技を自由に演技する「ラン」の最高得点と、一発技の「ベストトリック」上位2本の得点との合計で競う方式で272・75点。日本勢は21年東京五輪を制した西矢椛に続き、同種目で2連覇した。14歳10カ月でのメダル獲得は、日本女子4番目の若さ。“家族一丸”で栄冠をつかんだ。

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 涙があふれそうだった。それでも吉沢は表情を変えない。「最後まで気を抜かずに」。金メダルが確定した中で迎えた最終5本目のベストトリック。パリ中心地のコンコルド広場に詰めかけた観衆が熱狂する中、冷静に着地させる。この日の自己2番目の高得点。合計点をさらに3・12点上乗せし、両手を突き上げた。「努力してきてよかったな」。ただただその思いが、14歳の胸には宿った。

 幼い頃から“家族一丸”だった。「恋」と書いて「ここ」と読む名前の由来は、4つ年上の兄心(しん)さん。「家族一緒に生きていきたい」という願いのもと、「心」の字が入った名を授かった。競技を始めたきっかけもその人。7歳の時、地元神奈川・相模原市の小山公園で滑る姿を見て「自分もやってみたい」と志した。

 始めてからは、ほぼ毎日練習場に通い詰めた。常に隣にいたのは両親。コーチ役の父から厳しい指導を受け、一家で熱心に練習を繰り返した。父は学校終わりの練習に付き添うため、保育士から時間の融通が利く介護職に転職。「そこまでする?」と最初は驚きが強かったが「それもあって、ここまでこれた」と二人三脚で歩んできた。

 世界への思いが強まったのは小6だった11歳の夏。テレビで東京五輪を見ていると、13歳の西矢が金メダルを手にした。驚いたのは、西矢が繰り出した大技「ビッグスピン・ボードスライド」をすでに習得済みだったこと。自分も世界一の可能性を秘めていると気が付いた。「もしかしたら私にもチャンスがあるんじゃない?」。パリへの道が見え始めた。

 自他共に認める負けず嫌いの性格が、その道を進む推進力になった。「悪く言っちゃえばわがまま。絶対に勝ちたいから」。幼少期から習ったピアノや水泳は長続きはしなかった。ただ、スケボーだけは特別だった。「誰かを気にするより、思いきりやれる」。辞めたいとは思わなかった。

 14歳310日でつかんだ金メダル。現地入りしていた家族に報告すると、見たこともない表情が広がった。「人生で一番の笑顔だった。自分の活躍で笑顔になってくれるのはうれしい。これからも、もっと楽しませたい」。見る人を喜ばせる滑りを、これからも追い求めていく。【藤塚大輔】

 ◆吉沢恋(よしざわ・ここ)2009年(平21)9月22日、相模原市生まれ。小山中3年。兄の影響で7歳から競技を始める。トランポリンでも空中感覚を磨く。東京五輪金の西矢椛が大会で披露した、空中で板を横に半回転させレールに飛び乗って後ろ向きで滑る「ビッグスピン・ボードスライド」を小学校高学年で習得。23年世界選手権5位。今年6月の五輪予選最終戦で初優勝。160センチ。