【なでしこ】谷川萌々子のロングシュートを“保存した”JFAアカデミー福島山口隆文監督の意図

AI要約

19歳2カ月の谷川萌々子が活躍し、五輪史上最年少得点を記録。

谷川の得意とするロングシュートが劇的な決勝弾となり、試合をひっくり返す。

谷川は山口隆文監督の指導を受け、練習を重ねて武器を磨き上げた。

【なでしこ】谷川萌々子のロングシュートを“保存した”JFAアカデミー福島山口隆文監督の意図

<パリオリンピック(五輪):サッカー・ブラジル1-2日本>◇28日◇女子1次リーグC組◇パルク・デ・プランス競技場

 女子日本代表なでしこジャパンMF谷川萌々子(19=ローゼンゴード)が救世主となった。

 後半35分から出場すると、鋭い出足や積極的な攻撃参加で流れを変えると、同44分にペナルティーエリア内で相手のハンドを誘いPKを獲得。DF熊谷紗希主将(33=ローマ)の同点弾を“アシスト”した。さらには追加タイム6分にゴールまで約35メートルの位置から相手の意表を突くロングシュートを決めてあっという間に試合をひっくり返してみせた。19歳2カ月は男女通じて日本の五輪史上最年少得点だった。

 劇的決勝弾には谷川の魅力が詰まっていた。ロングシュートは自身の代名詞。父親から「積極的に狙っていいと思うよ」と中高時代、毎試合のようにアドバイスを受けていつしか無意識に打てるようになった。「体が自分の打てるゾーンに入ったら、もう選択肢に入っているという状態」という習慣が大舞台の重要局面で発揮された。

 JFAアカデミー福島時代に5年間指導に当たった山口隆文監督(66)は、谷川のロングシュートを「保存」した。女子の中高年代では、GKの身長が低いこともあり、遠目から打ったシュートが事故的に入ってしまうことも珍しくないという。

 中村憲剛を高校時代に指導したことで知られる山口監督は、中2の谷川がハーフウエーライン付近から得点を決めるのを何度も目撃した。レベルが上がれば少なくなるプレーだけに、パスの選択肢を与えるなど、現実的な指導をしてもおかしくないが「入るわけねーだろとは本人にはいわずに放っておこうと思ったわけ。そうしたらあの子は常に狙うんだよね。それは保存した」とあえてそのままにした。

 良さを消さない指導法がハマった。「狙おうとするためにキック力もつけるし、練習もする」の読み通り、谷川は練習試合でも常にロングシュートを狙うようになり、武器がより磨かれていった。

 昨年のワールドカップ(W杯)ニュージーランド・オーストラリア大会ではJFAアカデミー福島の同期DF古賀塔子(18=フェイエノールト)とともにトレーニングパートナーだった。この1年の急成長でわずか18人の五輪メンバー入りを射止めた。合流直後の国内合宿では、クラブで負傷した影響で別メニュー調整が続いたが、焦ること無く地味な調整に取り組み、調子を上げた。デビュー戦でこれ以上ない活躍。山口監督の「あいつは常に点を取りたいと思っている。感覚はいいから点は取れると思う」の予言通り、見事なゴラッソで劇的逆転勝利の立役者となった。【佐藤成】