初戦パラグアイ戦5‐0大勝の裏にあった「危険すぎる」罠と「勝ち点3以上」の意味(2)「払拭された」数的優位の恐怖と「底知れない」藤田譲瑠チマの才能

AI要約

相手選手の退場による数的優位を活かして、日本代表がパラグアイに5-0で勝利。試合は簡単なものではなく、絶好機を逃す場面もあったが、二次攻撃で迫力のある得点を挙げた。

若手選手たちが克服した「数的優位の恐怖」をバネに、日本代表は終盤まで集中力を保ち、追加点を重ねて完勝。勝利だけでなく、罠にはまりながらも立ち向かった精神面でも成長を示した。

大会初戦の勝利は大きな意味があり、ヘッドコーチの手腕も光った。また、中盤で活躍した若手選手たちの才能が光る一戦だった。

初戦パラグアイ戦5‐0大勝の裏にあった「危険すぎる」罠と「勝ち点3以上」の意味(2)「払拭された」数的優位の恐怖と「底知れない」藤田譲瑠チマの才能

 前半なかばで相手のパラグアイ選手が1人退場になり、70分間以上を数的優位で戦って5-0。しかし、「楽勝」のひと言では片づけられない試合だった。ひとつ間違えば、勝ち点を失いかねない危険に満ちた時間帯があったのだ。サッカー日本代表、サムライブルーのパリ五輪初戦パラグアイ戦を、サッカージャーナリストの大住良之が徹底分析する!

 そして日本は「勝機」を逃さなかった。後半17分、相手が前線の選手を2枚替えする。試合再開は、日本の右サイドでのスローインだった。

 関根大輝が寄ってきた細谷に投げ、細谷からリターンを受けると、中に持ち出してペナルティーエリア手前の山本理仁へ、その右を細谷が走る。左へ一歩もった山本は、背中を走る細谷にパス。ペナルティーエリア右のスペースで細谷が完全にフリーになる。

 打ってもよかった。打つべき場面のように見えた。だが、細谷は中央でフリーの三戸へのパスを選択した。ただわずかに合わず、ボールは左に流れた。

 絶好機を逃した形の日本だったが、そこからの二次攻撃に迫力があった。上がってきた大畑がボールを回収し、左サイドで斉藤、山本とパスをつなぐと、ペナルティーエリア内で大畑から受けた斉藤が圧倒的なテクニックでファビアン・バルブエナをかわし、ゴールライン際からふわりとクロス。それを中央で待ち構えた三戸が闘志あふれるダイビングヘッドでゴールに突き刺し、2-0としたのだ。

 4月25日のカタール戦以来、日本の若い選手たちの心の底に潜んでいた「数的優位の恐怖」は、これで完全に解消した。その後の日本は、山本、そして交代ではいった藤尾翔太(2点)と追加点を挙げ、終わってみれば5-0の完勝となった。

 オリンピックのような大会でのグループリーグ初戦勝利には大きな意味がある。しかし、それ以上に、危険極まりない「罠」のような状況を乗り越えて勝利をつかんだというところに、この試合の大きな意味があった。

 1週間前のフランス戦では、1-1で引き分けたものの、相手のスピードにまったくついていけなかった日本。しかし大岩監督は最後の1週間でチームを見事に仕上げ、前半なかばまでの戦いでわかるように非常に良い状態に仕上げた。

 そしてピッチの中では、中盤で相手の攻撃を止め、そこから効果的なパスを出し続けた藤田譲瑠チマが、底知れない才能を見せつけた試合だった。

 中2日で続く戦いの初戦、それは勝ち点3以上の意味があった。