【全日本】「明るく、楽しく」ではない田村男児の「痛みが伝わる」プロレスに期待大

AI要約

子供の頃からプロレスを愛し続けてきた筆者が、新日本プロレスからU系団体、そして全日本プロレスに移り変わる過程を語る。

全日本プロレスの魅力的な選手たちや試合に触れる中で、異質な存在である田村男児に注目し、その試合内容とコメントを紹介している。

筆者はかつて全日本プロレスに参戦していた中嶋勝彦に魅了されており、彼の姿が不在となった今でも、田村男児の強さと激しさに期待を寄せている。

【全日本】「明るく、楽しく」ではない田村男児の「痛みが伝わる」プロレスに期待大

 正直に言うと、子供の頃は新日本プロレスばかり見ていた。その頃はまだゴールデンタイムにプロレス放送がおこなわれており、アントニオ猪木やハルク・ホーガンの姿に熱狂した。

 時が経ち、大学生ぐらいになるとU系の団体に心を奪われた。前田日明氏のリングスや高田延彦氏のUWFインターなどを見るために頻繁に会場へ足を運んだ。Uインター対新日本の対抗戦で、高田延彦がまさかの足4の字固めで武藤敬司に敗れた時には、東京ドームの客席で本気で泣いた。

 そんな筆者にとって、全日本プロレスは、日刊スポーツのプロレス担当になるまで、ほとんど縁がなかった。さすがに四天王(三沢光晴、川田利明、小橋建太、田上明)ぐらいは知っていたが、その他の選手の知識は皆無といっていいほどだった。

 だが、実際に取材に訪れると魅力的な選手がたくさんいるし、試合も面白い。3冠ヘビー級王者の安斉勇馬は188センチ、105キロの恵まれた体を持ち、俳優としても通用するレベルのルックス。女性からの人気も絶大だ。まだ25歳と若く、安斉には明るい未来しか見えない。団体の掲げる「明るく、楽しく、激しい」を体現していく存在になるだろう。

 だが、ひねくれ者の筆者は、そんな全日本の中で異質の光を放つ田村男児(だん、25)に注目している。ずんぐりむっくりした体に黒のショートタイツ、眼光は鋭く、見るからに「明るく、楽しく」というタイプではない。痛さが伝わってくるような荒々しいファイトスタイルも説得力があっていい。

 15日の横浜大会(横浜ラジアントホール)では、佐藤光留と一騎打ちを行い、ほとんど最初から最後までエルボー、チョップ、張り手で殴り合った。終盤には田村が至近距離から渾身(こんしん)のラリアットを連続で見舞い、一方の佐藤は「ゴン!」と音がする頭突きで田村を痛めつけた。 そして12分50秒、佐藤のヘッドバットをかわした田村がそのまま抱え上げてデスバレーボムで3カウントを奪って勝利した。

 田村は試合後「あのリング上がすべてだろ! 若手、新世代と言われる北斗軍、斉藤ブラザーズ、エルピーダ(安斉、ライジングHAYATO、本田竜輝、綾部蓮)…、明るく楽しいだけ。明るく楽しいなんて、そんなもん薄っぺらいんだよ!」と現在の全日本の“本流”を痛烈に批判した。

 その上で自身の試合について「(体に)痛みが来るんだよ、直接。カミナリが走るんだよ。そういうプロレスだってあるんだよ」と力を込め、「『明るく、楽しく』なんて薄っぺらくて、なんもねえんだよ」と再度繰り返した。

 “本流”を支持する全日本ファンには怒られてしまうかもしれないが、筆者は最近まで全日本に参戦していた中嶋勝彦(36)が好きだった。安斉ら典型的なベビーフェイスたちの中で、強烈な毒を放っていたからだ。

 だから中嶋が全日本から姿を消して以来、少し物足りなさを感じていたのも事実だ。そんな物足りなさを埋めてくれるのが田村の「強さ、激しさ」。今後も目が離せそうにない。

 【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)