ハースのおかげで、アウディと契約できた……ヒュルケンベルグ、移籍の決断は簡単なモノじゃなかった「今年も最後の最後まで100%尽くす」

AI要約

ニコ・ヒュルケンベルグがハースを離れ、ザウバーに移籍することになった背景について述べられている。

ヒュルケンベルグのF1キャリアやハースでの活躍、将来への期待が語られている。

移籍の決断やアウディへの展望についても、ヒュルケンベルグのコメントが紹介されている。

ハースのおかげで、アウディと契約できた……ヒュルケンベルグ、移籍の決断は簡単なモノじゃなかった「今年も最後の最後まで100%尽くす」

 今季限りでハースを離れ、来季からザウバーに加入することになったニコ・ヒュルケンベルグ。ザウバーは2026年からF1に新規参入するアウディのワークスチームとなる、将来有望とされるチームのひとつだが、それでもヒュルケンベルグにとっては、移籍は当然のことではなかったという。

 ヒュルケンベルグは今シーズン、堅実な速さを見せている。度々予選Q3に進出し、マシンのパフォーマンスが上がった後は、オーストリアGP、イギリスGPと2戦連続で6位入賞を果たし、現在コンストラクターズランキング7番手につけるハースが、6番手RBとの差を急激に縮める後押しとなった。

 ただヒュルケンベルグは、F1で成功したドライバーとは言えないかもしれない。2010年にウイリアムズからF1デビューを果たした後、フォースインディアやザウバー、ルノーと所属チームを転々としてきた。2010年のブラジルGPでは、天候の変化を読み切って衝撃的なポールポジションを獲得したが、ここまで表彰台はゼロである。

 2019年限りでレギュラーシートを失った後、2020年にレーシングポイントから2戦、2022年にはアストンマーティンから2戦、それぞれ代役参戦を果たしたが、それでもヒュルケンベルグのF1での将来には悲観的な見方も強かった。

 しかし2023年には、ハースのF1レギュラーシートを掴むと、前述のとおり2024年にも活躍。これが注目を集め、ザウバーCEOのアンドレアス・ザイドルから声がかかり、アウディのワークスシートを掴むことになった。

 そしてmotorsport.comの姉妹誌であるGP Racingの取材に応じたヒュルケンベルグは、ハースを離れるという決断は簡単なモノではなかったと明かした。

「ハースで過ごした時間は本当に楽しかったし、エンジニアやメカニック、アヤオ(小松礼雄チーム代表)や昨年までのギュンター(シュタイナー前チーム代表)との仕事も楽しかった」

 そうヒュルケンベルグは語った。

「感謝している部分もある。彼らのおかげでF1に復帰することができたし、間接的に次の契約を狙うチャンスをもらえたんだ。彼らがいなければ、この契約は成立しなかっただろうから、感謝している」

「ハースには、もっと改善の余地があると思う。色々なことが重なっただけだ。チームの中でうまくいかない状況に陥ったこともあった。それは良いことではなかった。でも今になってみれば、そういう状況に陥ったことは、とても価値のあることだった」

「だから皆さんが考えるほど簡単なことじゃなかったんだ」

「アヤオにそのことを伝えた時、僕はすぐにこう言ったんだ。『今シーズン、このことで僕が何か変わるとは思わないで欲しい。最後のコーナーまで、ハースのために100%全力を尽くすよ』とね」

 2023年のハースは、チームの歴史の中でも最悪と言えるシーズンを過ごした。タイヤが異常に摩耗してしまい、予選で速さを見せたとしても、決勝では後退してしまう……そしてその原因を見つけられなかったのだ。

 ヒュルケンベルグはその時でも、チームがモチベーションを失わないように務めたという。それには、レギュラーシートを得られなかった不遇の3年が活きていた。

「モチベーションを失うわけにはいかなかった」

 ヒュルケンベルグは2023年シーズンについてそう語った。

「そりゃあ良くなかったよ。レース中もそうだし、トップ10からスタートして16位とか17位でフィニッシュした時も、フラストレーションを感じていた」

「でも、F1に乗れる人は世界で20人しかいない。3年間休んだことで、それまでとは違った認識を持つことができた。厳しい状況だとは思っても、一歩引いて外からみれば、実はそれほど悪くない。全ては相対的なモノなんだ」

「僕は今でもレースを楽しんでいる。勝てなかったり、結果的に何か意味があることを達成できなかったとしても、少なくともできることは最大限やって、『もう選択肢は何もない。ミスしなかったけど、競争力が足りなかった……これは僕らの問題だ。それを解決するために努力しよう!』と言えるようにしたいんだ」

 ヒュルケンベルグは1987年生まれの36歳。まもなく37歳を迎えることになる。年齢的にみれば、F1キャリア終盤と言うべきだろう。そして2026年からF1に打って出るアウディが真の意味での競争力を手にするまでには時間がかかる可能性もある……つまりヒュルケンベルグは、せっかくのワークスチームのドライバーに就任しても、その立場の恩恵を享受できる時間はあまり残されていないかもしれない。

 しかしヒュルケンベルグは、その状況については特に心配していないという。

「未来を予測することなんてできない」

 そうヒュルケンベルグは言う。

「もちろん、アウディが何をしているのか、舞台裏でどう動いているのかということについて、少しは見たり聞いたりしている」

「2026年のレギュレーション変更は、新しいメーカーが参入する非常に良い機会だ。基本的にはリセットボタンのようなモノだし、パワーユニットと車両の両方で白紙になることで、全体的なパフォーマンスをより均等にするだろうからね」

「アウディは、F1で成功するために必要な要素を全て備えている。僕はとても楽観的に考えているけど、人生における他のことと同じように、そうなる保証はない」

「レッドブルからのオファーはなかったからね! だからアウディからのオファーが僕にとって最も良いモノだったんだ」