「主人公は、東洋大黄金世代でいえば」…池井戸潤の“箱根駅伝”最新長編を読んだ柏原竜二が「泣きそう」になったシーンとは

AI要約

柏原竜二さんが『俺たちの箱根駅伝』を読んで感じたこと、特に主人公・青葉隼斗くんに注目し、チームの心理的安全性を追及した点に感動した。

柏原さんは池井戸潤氏が描くチームの結束力やコミュニケーションを称賛し、心理学の視点からその描写に興味を持った。

記事では、柏原竜二さんの走りへの賞賛や進学の発表、新たな挑戦への意欲も語られている。

「主人公は、東洋大黄金世代でいえば」…池井戸潤の“箱根駅伝”最新長編を読んだ柏原竜二が「泣きそう」になったシーンとは

 圧倒的な走りで「2代目・山の神」と呼ばれ、東洋大学を3度の総合優勝へ導き、 “黄金時代”を築き上げた柏原竜二さん。卒業後は富士通に進み、現在は「箱根駅伝」を解説する立場となった。

「箱根駅伝」を内と外から見続ける柏原さんは、池井戸潤氏最新長編『俺たちの箱根駅伝』をどう読んだか。また、今春からの大学院への進学を発表した彼が、「新たな挑戦」を続ける理由とは――。

 ロングインタビュー後編です。<前編を読む>

――『俺箱』の主人公・青葉隼斗くんが「いい仕事をしている」というコメントもいただきました。

柏原 僕が最後まで読んで、泣きそうになったのが隼斗くんのシーン。彼がチームのために果たしている役割は大きくて、いくら甲斐監督が土台を作っても、実際にチームを作り上げる選手たちが乗ってこないと活かされない。隼斗くんは、「キャプテン」という立場から、このチームの「心理的安全性」を作り上げた。その功績は大きいと思います。

隼斗くんは、見ようによってはチームのために働きすぎ、もっと自分個人にフォーカスしてもいいのに、っていうキャプテンで、自己犠牲を払える性格。僕たちのチームで言うと川上(遼平)みたいなタイプ(笑)。でも池井戸さんが彼の働きを意識していて、最後に解放するような筋書きだったのはさすがだな、と思いました。

 甲斐監督が議論のための「土台」を作りあげたことや、主務・矢野計図くんが「下の名前で呼び合いませんか?」と提案するところを見ると、このチームは「心理的安全性」を担保させようとしたチームだなと思います。心理学用語で、“オープンなコミュニケーション、失敗への寛容、サポートと尊重、多様性を受け入れている”という4つのことが共有された状態を指します。会社など、組織の中でいかに「心理的安全性」を高めるかということが日夜議論されているわけですが、本書で描かれているチームは、これが非常にうまくいっている。池井戸さんはどこで心理学を学んだんだろう? と不思議に思っています(笑)。