「君が頑張ることで希望を」 国指定の難病を抱える球児、周囲の声を励みに奮闘 最後の夏に集大成の最終打席

AI要約

鹿児島実と大島の対戦で鹿児島実が勝利し、2年前の決勝の再現にも関わらず先輩たちの雪辱を果たすことができなかった。

身長150センチの森翔太は難病「軟骨無形成症」を持ち、野球生活最後の代打として三ゴロに倒れたが、自身の短所を乗り越えるために打撃に専念し、チームに貢献する道を選んだ。

病気を抱えながらも、森は選手としてのプレーを通じて希望を与え、病気で苦しむ人々に勇気を与えることを意識し、高校野球を最後に進学の道を模索している。

「君が頑張ることで希望を」 国指定の難病を抱える球児、周囲の声を励みに奮闘 最後の夏に集大成の最終打席

 ◆第106回全国高校野球選手権鹿児島大会1回戦鹿児島実7―4大島(9日・鴨池市民球場)

 2年前の決勝の再現となった対戦は鹿児島実に敗れ、先輩たちの雪辱は果たせなかった。

 背番号16の森翔太(3年)は5回に代打で出場し、三ゴロに倒れた。最速151キロの本格派右腕の球をはじき返したが「塁に出られなかったのが悔しかった」と野球生活最後の打席を振り返った。打席の後は交代し、一塁コーチとして最後までグラウンドに立ち続けた。

 森は国が指定する難病「軟骨無形成症」で身長は150センチと他の選手よりも小さい。小3で野球を始めてから三塁を守ってきたが「手足が短いので守備は不利なんで、この身長を野球にどう生かすか考えました」。自分で考えた結果、代打でチームに貢献する道を選んだ。高校最後の1年間は守備の練習はせず打撃に専念。ミート力を上げるためにノックもした。「身長が低いのでストライクゾーンも狭い。四球で塁に出たらチャンスをつくれるから」。小柄な体を生かしてチームの役に立つ方法を模索した。この日の1打席が1年間の集大成だった。

 遠征や他チームとの練習試合では、森のプレーを見た対戦相手の監督や保護者に「新しい野球の新しい形を見られた」「君が頑張ることで周りに希望を与えているんだよ」と言われたのがうれしかった。「自分が頑張って同じ病気の人に見てもらいたいと思ったんです」。病気で苦しむ人に勇気を与えたいという気持ちが頑張る支えでもあった。

 9年間続けてきた野球はこの夏が最後。卒業後は進学するつもりだ。「これからも野球にかかわりたい気持ちもあるけど…」。新しい道はこれからじっくりと考える。

(前田泰子)