光より速い素粒子「タキオン」は“存在可能”かも
光速を超えることは理論的に可能かどうかについて、タキオンという仮想的な素粒子が存在する可能性がある。
タキオンは常に光速を超える速度で動いているとされ、物理学者の間で議論が続いている。
最近の研究では、特殊相対性理論とタキオンの存在は矛盾しないという見解が示され、タキオンの存在可能性が高まっている。
光速を超えることは理論的に可能?
真空中における光の速度は秒速29万9792.458km(約30万km)。1秒間に地球を7周半できる速さです。
これは宇宙最速であり、ほかのいかなるものにも超えることができない速度であると、アインシュタインが特殊相対性理論において提唱しましたよね。
けれども、「もしも光速を超える速度で移動できる物体があったとしたら」という仮定に基づいた幻の素粒子も、物理学上定義されています(ほとんどの物理学者は存在しないと考えているらしいですけど)。
それがタキオン(tachyon)。語源であるギリシャ語(tachy)は「速い」を意味しています。
常に光の速さを超える速度で動いているとされる仮想的な粒子ですが、タキオンがこれまで実際に観測された例はなく、あくまで理論上考えられうるものとして扱われてきました。
アクシオン(axion)や暗黒光子(dark photon)など、この宇宙を構成しているであろうと仮定されている多くの素粒子と同様に、タキオンが存在する証拠はまだ見つかっていません。
ですが、もしもタキオンが存在していたのなら、素粒子物理学や場の理論上における問題を解くカギになるだろうと信じている物理学者もいます。
そんな学者たちにとって希望の光となりそうなのが、Physical Review D誌上に最近発表されたある論文です。
なんでも、ワルシャワ大学の研究者によれば、特殊相対性理論とタキオンの存在とは理論上矛盾しないとのこと。矛盾しないとは、すなわち存在している可能性も高まったということになります。
タキオンが存在しないだろうと言われてきた理由はいくつかあるそうです。
一つめは、「タキオン場」と呼ばれる虚数の質量を持つ量子場は、基底状態が不安定だとされているため。
二つめは、もしもタキオンを観測できたとしたら、観測者の位置によって観測されるタキオンの数が異なって見えてしまうため。
また三つめは、タキオン粒子の持つエネルギーが負の値を取る可能性があるためです。