福島第一原発の処理水、6万トン海へ 放出1年 デブリ回収見通せず

AI要約

福島第一原発からの処理水海洋放出が1年続き、6万トンを放出。放出の目的や現状、周辺の影響などについて。

汚染水の処理や放出に関する課題、高濃度の放射性汚泥「スラリー」の増加や処理方法について。

汚染水処理施設の脱水処理開始が遅れ、固化処理方法が未定。将来の対応計画と困難を抱える現状。

福島第一原発の処理水、6万トン海へ 放出1年 デブリ回収見通せず

 東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出が始まって24日で1年となる。これまでに約6万トンを海に放出した。周辺の海水から異常は確認されていないという。放出は今後30年ほど続く。

 福島第一原発では、事故により核燃料が溶け落ちて「燃料デブリ」となっている。これを冷やすための水と、原子炉建屋に入り込む雨水や地下水が混じり、高濃度の放射性物質に汚染された水が1日約80トン増え続けている。多核種除去設備(ALPS)で放射性物質を取り除き、敷地内のタンクに保管している。

 タンクは1千基を超え限界に近いとして、国は2021年4月、海洋放出を決定。昨年8月、除去できないトリチウムなどを含んだ水を、海水で薄めて海に流し始めた。

 これまでに計約6万トンの放出を終えたが、8月1日時点でまだ約131万2千トンが残る。放出により解体できるようになったタンクは全体の2%だ。東電は、空になったタンクを解体して、その跡地を燃料デブリの保管場所に使うと説明する。

 東電は、国の基準をクリアした水だけを海水で薄めて、トリチウム濃度を1リットルあたり1500ベクレル(国の放出基準の40分の1)未満にして海に流してきた。政府や東電などは放出開始以降、福島第一原発の周辺で海水や魚の放射性物質の濃度を調べているが、異常は確認されていないという。

 放出は廃炉の完了目標の51年までに終える計画だが、汚染水の発生源となる燃料デブリの取り出しは困難を極める。22日に初めて試験的な取り出しに着手しようとしたが、手順ミスで中断した。

 処理水放出のほかにも課題は山積する。汚染水処理の過程で出てくる高濃度の放射性汚泥「スラリー」も増え続けているが、処理方法は具体的に決まっていない。

 増え続けるスラリーは、タンクで保管されているが、液体状だと漏れ出すリスクが残るため、脱水して量を減らしてから、固体状に処理する計画だ。

 そのための装置をつくる申請を21年にしたが、原子力規制委員会から作業員の被曝(ひばく)リスクを指摘され、設計見直しに。脱水処理開始は22年度から26年度にずれた。さらに、脱水したスラリーを固化する具体的な方法は決まっていない。東電は25年度内にも固化処理の方法を決定し、35年度ごろの固化処理開始をめざしている。(玉木祥子)