実は厄介な巣穴を掘る害獣として20世紀中に98%が「駆除」されたプレーリードッグ

AI要約

プレーリードッグは北米の草原地帯に生息し、巣穴で暮らす社会的な齧歯動物である。巣穴は入り組んでおり、様々な部屋や通路が存在し、外敵から身を守るための見張り所も設けられている。

家族集団を形成し、エサを分け合ったり、挨拶を交わしたりするプレーリードッグは、大きなコミュニティーで暮らすタウンを形成することもある。一方、別種のプレーリードッグは広大な範囲に分散して暮らす。

プレーリードッグは進んだコミュニケーション能力を持ち、警告の鳴き声などで情報を共有する。しかし、近年では農地開発により生息地が減少し、環境保護の観点から保護される必要がある。

実は厄介な巣穴を掘る害獣として20世紀中に98%が「駆除」されたプレーリードッグ

 絶大な人気を誇る、この小さな齧歯(げっし)動物は、北米の草原地帯の一部で生息している。プレーリードッグは地下に作る広大な巣穴で生活する。その巣穴の中では多くの通路や部屋が入り組んでいるが、地上の入口は盛り土で見分けがつく。巣穴の小部屋にはそれぞれ決まった用途があり、子ども部屋や寝室、トイレの場所まで決まっている。また、出口付近には外敵の動きを聞き分けるための見張り所まである。

 彼らは巣穴を掘ること、そして掘り直すことに多くの時間を費やす。ほかの動物もプレーリードッグの恩恵を受けている。この巣穴をヘビやアナホリフクロウも使い、プレーリードッグをその巣穴で捕食するクロアシイタチまでもが利用するのだ。

 オス1匹と数匹のメス、その子どもたちから成るプレーリードッグの家族集団は一緒に巣穴で暮らし、エサを分け合ったり、ほかのプレーリードッグを追い散らしたり、お互いに毛づくろいをして生活する。集団のメンバーは、鼻をくっつけたり、キスをしたりして互いに挨拶を交わしさえする。子どもは遊び好きで、巣の近くでたわむれる様子をしばしば見かける。

 5種類のプレーリードッグの中で最も有名なオグロプレーリードッグは、「タウン(町)」と呼ばれる数百匹からなる大コミュニティーで暮らす。典型的なタウンは1.3平方キロほどの広さだが、さらに巨大なタウンもある。記録上で最大のタウンは、6万5000平方キロにもおよんだ。北海道の8割弱にも及ぶこのテキサスのタウンには、およそ4億匹ものプレーリードックが暮らしていたとされる。

 別種であるオジロプレーリードッグは西部の山中に生息している。この種は大きなタウンを作らず、広大な範囲に分散している。プレーリードッグのすべての種は、冬になるとエサの豊富な季節に蓄えておいた脂肪を消費しながら、巣穴の中でじっとしている。オジロプレーリードッグは山中の草原地帯で6カ月ほど冬眠するが、オグロプレーリードッグは、暖かい日には巣穴の外でエサを食べることもある。

 この大きなリス科動物は、昼間は巣穴から出て、草や根、種などを食べる。大きな鳴き声で互いに情報を伝え合う。例えば、警告の鳴き声を上げてタウンの住民にアナグマやコヨーテなどの外敵が接近していることを知らせると、全員が一斉に巣穴の中に逃げ込む。危険が去れば、「警報解除」の知らせがコミュニティー全体に伝達される。

 いまでは北米のグレートプレーンの大部分が農場や牧草地になっており、そこではプレーリードッグは歓迎されない動物だ。破壊的な巣穴を作るために、しばしば害獣として捕殺された。20世紀中に98%が殺されてしまい、また、その生息地もかつての5%にまで減少してしまった。