iPhone 16シリーズ、買うならどのモデル? 各モデルの違いから選び方を考える

AI要約

iPhone 16シリーズでは、スタンダードモデルのオススメ度合いが増しており、Proモデルと比較して差は小さい。

スタンダードモデルの軽さや価格、プロセッサ性能の底上げなどを考慮すると、Proモデルを選ぶ必要が少ないかもしれない。

デザインやサイズも検討し、実機を手に取ってからの購入を検討することがオススメ。

iPhone 16シリーズ、買うならどのモデル? 各モデルの違いから選び方を考える

 今年も9月にiPhoneの新モデルが発売する。無印とPlus、Pro、Pro Maxの4モデル構成だ。

 毎年、この時期になると「iPhoneを買い換えるべきか」「どのiPhoneにするべきか」で悩む人が少なくないと思う。本稿では後者、自分に合ったモデル選択の助けになるべく、公表されている情報を元に、4モデルの違いを比較解説する。

 結論を先に述べておくと、iPhone 16シリーズは、スタンダードモデルのプロセッサが最新世代になるなど底上げされているので、スタンダードモデルのオススメ度合いが増している。業務用途など本格的な高機能を追求しなければ、スタンダードモデルで不足を感じることは少ないハズだ。

 スタンダードモデルとProモデルの価格差は、大雑把に3.5万円。本稿ではここにどのような機能差があるかを解説していく。

■ 大きさは2種類。Proは前モデルより大きく

 まずは性能差ではなく、大きさの違いをざっくり解説する。

 ちなみにiPhone 15シリーズまではProとPro Maxに性能差(望遠カメラの倍率)があり、小さいのが欲しいけど性能的にPro Max、というパターンもあったが、今回はProモデル内での性能差がほぼなくなった。単純にサイズとスペックで選べば良い。

 数字の多い表で一見してちょっとわかりにくいかもしれないが、まずスタンダードモデルのiPhone 16/16 Plusを前モデルと比較すると、サイズは据え置きとなる。一方のProモデルは、ディスプレイサイズが大きくなった影響で、本体サイズも大きくなっている。

 iPhone 15シリーズからProモデルは筐体にチタニウム合金を採用し、薄くても強度を確保できるせいか、Proモデルの方が小さかった。しかしiPhone 16シリーズでは、幅こそProモデルの方が少しだけ小さいが、縦の長さは2mmほど大きくなっている。

 重量については、もともとProモデルの方が重たい傾向があったが、iPhone 16シリーズではスタンダードモデルは軽量化し、一方のProモデルは大型化に伴って重量増となったため、重量差は増している。結果として6.7インチのiPhone 16 Plusと6.3インチのiPhone 16 Proはともに199gと並んでしまった。

 筆者はこの1年、iPhone 15 Pro(187g)をメインに使っていたが、たまにiPhone 15(171g)を手にすると、「同じ大きさなのに軽いっ!」と軽く驚くくらいの重量差がある。iPhone 15シリーズでも、明らかに体感できるレベルの重量差だ。

 スタンダードモデルには「安い」だけでなく「軽い」という優位性もあることを念頭に、スタンダードモデルにするかProモデルにするべきかを選ぶべきだろう。

■ Proとスタンダードはプロセッサに違いあり。しかし差は小さそう?

 チップセットとしては、スタンダードモデルのiPhone 16/16 Plusは「A18」、ProモデルのiPhone 16 Pro/16 Pro Maxは「A18 Pro」を搭載している。iPhone 14/15シリーズでは、スタンダードモデルには1世代前のチップセットが採用されていたが、今回はいずれのモデルも最新同一世代のチップセットだ。

 最大のポイントは、iOS 18の目玉であるAIアシスタント機能「Apple Intelligence」に対応することだ。同機能はiPhone 15シリーズだとProモデルのみの対応だったが、iPhone 16シリーズでは全モデルが対応する。つまり、オンデバイスAI処理に必要な能力は無印のA18にも搭載されているのだ。

 公表されている情報によると、A18 Proの方がGPUコアが多い(無印が5コア、Proが6コア)ほか、映像処理やUSB3対応などの性能も強化されている。しかしCPUとNPUは同じとされている。

 実際のパフォーマンスやシステムメモリ容量などは、実機でベンチマークアプリなりを試さないと分からない。しかし、現状の情報を元にすると、GPU性能に最大2割の差があるかも知れないが、それ以外に大きな差はでないと推測される。

 AI機能がProモデルと同等となると、スタンダードモデルもiPhone 15 Pro同様に8GBを搭載している可能性が高い。そうなると、3.5万円安いスタンダードモデルがお買い得に感じられてくる。

 処理能力以外の差として、Proモデルは最大10GbpsのUSB3に対応する。同様の差があったiPhone 15シリーズについては、こちらの記事で比較しているので、興味がある方はご参照いただきたい。

 USB3は測定が難しいくらい高速だが、「RAW動画を高速SSDに録画する」とかでないと活用できないレベルの性能なので、業務でRAW動画を撮る人以外にはメリットは小さい。

■ Proモデル最大のアドバンテージはカメラ機能。でもやっぱり業務向けかも?

 カメラ機能では、スタンダードモデルとProモデルとのあいだに明確な差がある。ただ、Proモデルの機能は全般的に業務用途や特殊用途向けで、一般的な用途であればスタンダードモデルのカメラで不足を感じることは少ないと思う。

 まず分かりやすいところで、望遠カメラはProモデルのみが搭載する。ちなみにiPhone 15シリーズまではProとPro Maxで望遠倍率が異なっていたが(3倍と5倍)、今回は小さい方のProも5倍望遠となっている。

 5倍ズームはそこそこ離れたところの人物やモノを撮れる画角だ。スポーツとかステージとかを撮影する機会が多い人、子どもがいるとか取材で使うとかなら欲しい画角ではある。しかし日常撮影でそこまで使うかというと、なくても困らないとも思う(諸説ある個人の感想です)。

 メインの広角カメラは、スタンダードモデルとProモデルで若干のスペック差があるが、差は大きくない。いずれも前モデルから大きな変更はなく、48MPのFusionカメラを搭載し、デジタルズームでも画質が劣化しにくいのがありがたいポイントとなる。

 ちなみに48MPのFusionカメラは、内部的には4つのピクセルを統合して処理したりもするので、デジタルズームを使わなければ、上記の表の「ピクセル」にある数字の2倍のピクセルサイズに相当する明るさ性能を発揮する、らしい。

 超広角カメラは、スタンダードモデルとProモデルで別々の強化がされている。

 Proモデルでは超広角カメラも48MPのFusionカメラとなった。マクロ撮影でデジタルズームをかけても解像感を保てることなどがメリットとなる。実際のところ、マクロは1倍の画角で撮ることが多いので(超広角だと画角が広すぎる)、影響の大きなポイントでもある。

 スタンダードモデルの超広角カメラは、レンズが明るくなり、Proモデル同様にマクロ撮影に対応した(ただし12MP)。ピクセルサイズについては、iPhone 15では発表されていなかったので比較できないが、スペック上ではiPhone 15 Proなどの超広角カメラと同等になっている。

 RAW撮影機能は、静止画・動画ともに引き続きProモデルだけの機能となる。RAWは撮影したあとに現像・編集してクオリティアップさせることが前提の、やや業務寄りの機能で、通常用途で使う機能ではない。RAWは動画も静止画も容量を食いすぎて日常的には使いにくいのだ。

 4K HDR 30fpsや4Kドルビービジョン60fpsの撮影は、スタンダードモデルでも可能だ。ただしProモデルだと4Kで120fpsも可能となるので、編集でスローモーションにしたりするときはProモデルが良いが、これも業務用途向けと言えるだろう。

 あとはXRデバイス「Vision Pro」向けの空間写真と空間ビデオは、スタンダードモデルでも撮影可能になった。これはレンズが縦並び(横位置撮影なら横並び)になった影響かもしれない。ちなみにiPhone 15 Proでも空間ビデオは撮れるが、空間写真は撮れない。

 一方で立体形状を計測するLiDARは引き続きProモデルにしか搭載されない。LiDARを使う暗所でのポートレートモードもProモデル独占機能となる。あと、これもやや業務向けな用途だが、LiDARを使った立体物の取り込みなどをしている人は、Proモデルを選ぶべきである。

■ ディスプレイ性能もProが上

 iPhone 16シリーズのディスプレイは、いずれも「Super Retina XDRディスプレイ」と銘打つ有機ELディスプレイだ。解像度とサイズは違うが、ピクセル密度は460ppiに統一されている。コントラスト比や最大輝度はiPhone 15シリーズから変わっていないが、新たに「最小輝度1ニト」という性能が加わっている。

 Proモデルは従来のProモデル同様、「最大120Hzのアダプティブリフレッシュレートを持つProMotionテクノロジー」と「常時表示」に対応する。これはA18 Proだけが持つディスプレイ制御機能の差などに起因する。

 常時表示は、スリープ中も完全消灯せずに、ロック画面が薄暗く表示される続けるような機能だ(オフにもできる)。ロック画面をカスタマイズしておくと、時刻や通知だけでなく、次のスケジュール、天気、株価なども確認できて便利だが、デスクなどでMagSafe充電スタンドを使っていないとあまり意味はない機能ではある。

 120Hz対応は、iPhone 15シリーズで比較してみると、言われてみると分かるし、言われてもよく分からないレベルだが、画面スクロール時などの滑らかさがProモデルの方が良いような気がする。ただ、わりと微妙な違いなので、そこそこ慣れてないと気にならない差とも思う。

■ アクションボタンとカメラコントロールを全モデルに搭載

 iPhone 15 Proでスライドスイッチに代わり採用された左側面の「アクションボタン」は、iPhone 16シリーズでは全モデルに採用されている。使い道に若干悩む機能でもあるが、頻繁に使うアプリや機能を割り当てておくと便利なハズである。

 さらにiPhone 16シリーズでは、右側面のサイドボタンの下に「カメラコントロール」というボタンのようなものが追加された。こちらはメカニカルなボタンではなく触覚フィードバック付きのタッチパッドで、タップや長押し、スワイプなどの操作に対応する。

 カメラコントロールは名前の通り、カメラを操作するためのUIで、カメラを素早く起動したり、シャッターを切ったり、絞りやズームを操作したりできるという。筆者はまだ使っていないが、横位置撮影時に押しやすい配置なので、けっこう実用性がありそうだ。これまでもロック画面右下のアイコンなどからカメラをクイックに起動できたが、それがさらに早まるというわけである。

 スマホのカメラはもっとも頻繁に使うアプリでもあるので、このカメラコントロールは慣れると実用性が高そうなインターフェイスになりそうだ。これがProモデルだけでなくスタンダードモデルにも搭載されたのは、地味にありがたいポイントでもある。

■ 通信機能は同等。Wi-Fi 7の時代到来

 通信機能は全モデル違いはないが、新機能としてWi-Fi 7に対応した。2×2 MIMO対応のIEEE 802.11beだ。

 実はiPhone 15シリーズでは、スタンダードモデルはWi-Fi 6、ProモデルはWi-Fi 6Eとスペックに差が付いていた。おそらくチップセットの世代差によるものと思われるが、iPhone 16シリーズではチップセットが同一世代になったせいか、ここに差が付いていないのはありがたいポイントだ。

 Wi-Fi 6Eと比較すると、規格上の最大通信速度は9.6Gbpsから46Gbpsへの一気に増えることになる。といっても、規格上最大の帯域幅をiPhone 16で使えるわけでもないし、回線やサーバーの問題から、スペック上の最大速度を発揮される場面はほぼないだろう。

 しかしWi-Fi 7では高安定性や低遅延も実現するとされているので、いまからアクセスポイントを買うならWi-Fi 7にするのがオススメである。

 ちなみにIoT通信規格の「Threads」も、iPhone 15シリーズではProモデルのみだったが、iPhone 16シリーズでは全モデル対応となる。このあたりもチップセットが同一世代になった影響だろう。

 一方で位置情報システムは、スタンダードモデルはGPS、GLONASS、Galileo、QZSS、BeiDou対応だが、iPhone 15シリーズもiPhone 16シリーズもProモデルだけNavICを加え、さらに高精度2周波GPSに対応している。

■ iPhone 16はスタンダードモデルでもイイ!

 iPhone 15シリーズまでは、Proモデルだけプロセッサが良かったり、カメラのスペック差が大きかったりで、Proモデルを選ぶべき理由が大きかった。

 しかしiPhone 16シリーズでは、差はあるものの、業務向けだったり強いこだわりがある人向けだったりする機能が多く、公表されているスペックを読む限り、スタンダードモデルで不足を感じることが少ないと予想される。

 Proモデルとスタンダードモデルの差額は3.5万円。高スペックかつ大きいモデルが欲しいとなると、iPhone 16 Pro Maxは内蔵ストレージ256GBからとなり、18万9800円からとなかなかのお値段だ。iPhone 16の128GBモデル12万4800円からという価格も、決して安くはないが、円安・インフレの昨今ではかなり頑張っている値付けだろう。

 本体価格だけではなく、スタンダードモデルの方が重量が軽いのも無視できない。手にする時間が長いデバイスなので、軽さは正義だ。個人的には、もっと軽いminiモデルを復活させて欲しいと心底思うところだが。

 あとはデザインの違いもある。Proモデルはチタニウム筐体で、渋い色味が多い。対するスタンダードモデルはアルミニウム筐体で、明るい色も用意されている。価格やスペックでもどちらにするか決められなかったら、デザインの違いも考慮しよう。

 サイズやデザインをよく考えたいなら、すぐに予約するのではなく、発売後に店頭などで実機なりモックなりを手に取り、大きさやデザイン、手に馴染むかどうかを確認することを強くオススメしたい。手にするものなのだから、そこは重要なポイントだ。