日本の研究力低下、若手支援と研究時間の確保を 小野悠・豊橋技術科学大准教授

AI要約

日本は研究開発費や研究者数は世界3位、総論文数は5位を維持したが、注目度が高い論文の数は過去最低の13位だった。若手研究者への支援が充実し、博士課程への入学者数も増加している。高度専門人材としての博士の価値が認められ、研究者を目指す若者が増える可能性がある。しかし、研究時間の確保や研究者の業務負担の重さが課題となっている。

研究費の申請や管理、出張や物品購入の手続きなど、研究者は様々な業務をこなさなければならず、研究に集中する時間が不足している。これに加え、留学生を受け入れる手続きが複雑化しており、研究者は研究だけでなく事務手続きにも時間を割かねばならない状況だ。

研究者を支える職員の役割も重要であり、研究環境の改善や研究者の負担軽減が求められる。若手研究者の育成に力を入れる一方、研究者がより挑戦的な研究に取り組める環境づくりが必要である。

文部科学省の科学技術・学術政策研究所が9日公表した「科学技術指標2024」で、日本は研究開発費や研究者数は世界3位、総論文数は5位を維持したが、注目度が高い論文の数は昨年と同じく過去最低の13位だった。研究力強化を実現するのに必要な取り組みについて、豊橋技術科学大の小野悠准教授(都市工学)に聞いた。

日本の研究力が下げ止まるのか、さらに下がるのか。今回示された順位だけで判断することは難しい。ただ、現場感覚として、明るい兆しがなくはない。例えば若手研究者への支援は充実しつつある。博士課程への入学者数が増えているのは、その結果かもしれない。

今後、高度専門人材としての博士の価値がもっと社会的に認められ、ポストや給与といった待遇面で反映されていけば、研究者を目指す若者は増えるのではないか。

一方で、研究時間の確保も重要だ。国が若手研究者の育成に力を入れても、せっかく育った優秀な研究者が研究できないと非常にもったいない。

背景には研究者の忙しさがある。研究費の申請から研究機器の管理、出張や物品購入の事務手続きまで、あらゆることを自分でやっている。近年は安全保障との絡みで、留学生を受け入れる手続きが非常に煩雑だ。

これで同時に論文も出さねばならないとなると挑戦的な研究を避け、「楽な研究論文を書いていこう」と流されかねない。研究者を支える職員が果たす役割にも、より注目する必要がある。(聞き手 小野晋史)