胃がん健診、バリウムはもう古い?

AI要約

バリウム検査と内視鏡検査の特徴を比較して紹介。

胃がんリスク要因や検査方法の変遷について。

内視鏡検査が早期胃がんの検出に有利で、検査で得られる情報も豊富。

胃がん健診、バリウムはもう古い?

 皆さんは胃がん検診を受けたことがあるでしょうか。胃部エックス線検査(バリウム検査)は会社や地域の健診で行われる場合も多く、「げっぷを我慢するのが大変だった」という経験を持つ人もいるかもしれません。最近は検査に内視鏡(胃カメラ)を活用するケースが増えています。両検査の特徴を知って、自分自身に合った方法を選びましょう。

 かつて、胃がんは日本人のがん死亡原因の1位でした。1960年代をピークに死亡率は下がり続けていますが、依然として高いことに変わりありません。発症の大きな要因はピロリ菌の感染や喫煙です。塩分や塩分の高い食品の摂取もリスクを高めると報告されています。

 ピロリ菌の正しい名前はHelicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)で、感染すると胃の中で慢性的な炎症を起こします。菌の除去によって胃がんの発生リスクが減少するとされているため、胃カメラなどによって感染の有無を調べることも重要と言えるでしょう。

 胃がん検診は以前、エックス線検査が一般的で、同検査で異常が見つかった際に内視鏡検査が行われていました。しかし、厚生労働省が示した「がん予防重点教育及び検診実施のための指針」で内視鏡検査が推奨されて以降、最初から胃カメラを活用するケースも増えています。

 1. バリウム

 胃部エックス線検査は、バリウムと呼ばれる白い液体の造影剤を胃の中に薄く広げ、胃の形や表面の凹凸をエックス線で観察します。レントゲンに写った胃の凸凹を見て病気を判断することから、影絵のような検査と言えるでしょう。

 検査は比較的簡易で、費用が安く済みます。所要時間も短く、バスによる巡回検診も可能であるため、限られた時間内に多くの人が受けられる利点もあります。

 一方で、少量ながらエックス線被ばくがあるため、妊娠中ないし妊娠の可能性がある人は検査できません。バリウムの誤嚥(ごえん)や便秘、バリウムが腸にとどまることによる憩室炎などの合併症も報告されています。また、検査中はげっぷを我慢して姿勢を保つ必要があるため、ある程度の筋力があることや、検査中の指示を守れることも検査を受けるためには重要です。

 さらに、観察できるのはあくまで影絵であるため、画像で異常が発見されても確定診断とはならず、胃カメラによる追加診断が必要です。検査の回数が増えるという点では受診者にとって負担になってしまいます。

 2. 内視鏡

 口や鼻から内視鏡を挿入し、先端に取り付けた小型カメラで胃の中を観察します。胃部エックス線と違って胃を直接観察するため、粘膜の色の変化や小さな凹凸、模様の違いなどが識別できます。特に、早期胃がんでは粘膜の変化はわずかであるため、早期診断には内視鏡検査が有利です。検査で胃がんが疑われた場合には、その場で胃の組織を少量採取し、がん細胞やピロリ菌感染の有無を調べられるなど、一度に得られる情報も多いと言えるでしょう。

 カメラを挿入する際の苦痛や内視鏡操作による出血・穿孔(せんこう)といったトラブルが報告されていますが、内視鏡を専門とする施設では限りなくゼロに近く、安心して検査に臨んでいただけるでしょう。