睡眠時無呼吸症候群の治療継続率、98%超え―その診療内容とは

AI要約

SASは睡眠中に生じる無呼吸症候群であり、重症の場合は心血管や睡眠の質に影響を与える可能性がある。

治療を受けないことで致命的なリスクを増加させる可能性があり、重要な医療問題となっている。

適切な治療法の継続率が低い中、特定の医療機関では98%という驚異的な継続率が示されている。

睡眠時無呼吸症候群の治療継続率、98%超え―その診療内容とは

寝ている間に何度も無呼吸状態(10秒以上呼吸が止まること)になることでさまざまな合併症を引き起こす、睡眠時無呼吸症候群(SAS)。重症の患者は保険医療のCPAP(寝ている間に専用の機器が鼻から空気を送り込んで無呼吸を防ぐ治療法)を受けることできるが、この治療は1年継続率(1年間継続して診察を受けに来る割合)が高くなく、さまざまなデータがあるもののおおむね70%前後となっている。

そんななか国立病院機構東京病院の院長でもある松井弘稔先生は、ご自身が治療を担当するSASの患者さんの直近での開始後1年継続率が98%(2022年7月からの1年間で56人に導入し1年以内の脱落が1人)、を超えると語る。SASの治療方法とともに、同院の治療継続率が高い理由についても話を聞いた。

SASは、主に睡眠中に空気の通り道である“上気道”が狭くなることにより、無呼吸状態と大きないびきを繰り返す病気です。睡眠中、1時間あたりの無呼吸や低呼吸になった回数をAHIと呼び、睡眠ポリグラフ検査(医療機関に入院し、頭や顔に電極を付けて脳波や心電図、血液中の酸素濃度などを測る精密検査)の結果この値が30以上となったら重症とされます。

呼吸が止まると、我々の体内では血液中の酸素濃度が低下します。すると心拍数を上げて体内により多くの酸素を届けるためアドレナリンが分泌されますが、心拍数が増えることは心臓の負担が増えることにつながります。また、アドレナリンは血管を収縮させるため血圧も高くなってしまうのです。

たとえば、SASの重症患者さんは通常の方に比べ夜間の不整脈のリスクが約2~4倍、大動脈解離のリスクが約4倍高まるとされており、将来の心血管疾患を予防するためにもSASの治療は重要といえるでしょう。また、呼吸が止まると息苦しく感じて脳が覚醒するために、睡眠の質が低下し、昼間の眠気につながります。

この病気は、日本では2003年に山陽新幹線岡山駅付近で起きた新幹線の急停車事故で注目を集めました。運転士はSASを患っており、事故の際は運転中に約8分間居眠り運転をしていたことが分かっています。

それ以来、SASは重大な事故につながりかねない病気と認識され、とくにプロの運転手さんの多くがSASの検査を受けるようになりました。2019年には、1時間あたりの無呼吸になる回数を示す“AHI”が15以上の日本人の患者数は約900万人と推定されるという報告が出ており、患者さんは非常に多いといえます。