小学生のころはすぐに解けたはず……水と食塩、それぞれ何グラムあれば、10%の食塩水を1000グラムつくれるか?

AI要約

算数嫌いの大人たちに対して、暗記教育の問題点や算数を理解する楽しさについて考察されている。

算数教育の不十分さが大人の算数嫌いに影響を与える可能性が指摘されている。

具体的な算数問題や概念を通して、感覚よりも計算や理解を重んじる姿勢の重要性が説かれている。

小学生のころはすぐに解けたはず……水と食塩、それぞれ何グラムあれば、10%の食塩水を1000グラムつくれるか?

算数嫌いのまま大人になった人たちは「社会に出たら電卓があるから問題ない」「分数なんて実際に使うことはない」「わからなくても生活に困らない」などと言って、算数と無縁の生活を送りがちだ。しかし、あなたの算数嫌いが子ども時代に受けた教育のせいだったとしたら……。

『昔は解けたのに……大人のための算数力講義』(講談社+新書)著者の芳沢光雄氏(桜美林大学名誉教授)が、暗記教育で育った人が犯しやすい間違いと、算数を「理解する」ことの楽しさについて解く。

『大人のための算数力講義』連載第31回

『全国各地にある「富士見町」から、本当に富士山が見えるかを計算する方法』より続く

筆者は本年5月に「大人こそ算数の見方・考え方を大切にしたい」というコンセプトをもって『昔は解けたのに……大人のための算数力講義』を上梓した。

背景には、算数嫌いの人たちは不十分な算数教育による「教育の犠牲者」という側面があって、それを抜本的に補う必要性を以下のように痛感していたからである。

たとえば、教育熱心な親御さんが早期教育とばかりに、幼児に「イチ、ニ、サン、シ……」と単に数字だけを暗記だけさせることがある。このとき3本のクレヨンも、3匹の子犬も、3個の卵も、同じ「3」というものであることを説明しているだろうか。

同書では水1立方メートルの重さを答える問題を出し、選択肢として10kg、100kg、1トンを用意した。正解は1トンだが、あらためて「そんなに重いのか」と驚いた方も多かったようだ。10kgや100kgと間違えた人たちは、数字を用いた計算よりも、自分の感覚を優先してしまったのだろう。思い込みを廃して、素朴に計算することの重要性を学ぶ機会がなかったのかもしれない。

地図の縮尺は、その地図と実際の土地における長さの比を表す。1万分の1の縮尺なら、地図上の10cmが実際の土地では1kmになる。だが、面積の比は単に1万倍しただけではダメで、地図上で10cm四方の土地の実際の面積はタテとヨコをそれぞれ1万倍するため、2乗の比になる。こうしたことをきちんと教わってきただろうか。

他にも確率の基礎概念である「同様に確か」という言葉の意味をしっかり教わったことがあるのか、という疑問がある。あるならば2打席連続で凡退した3割3分の打者を見て、「確率的に言ってそろそろヒットを打つ頃である」という発言が誤りであることは理解できるだろう。