全国各地にある「富士見町」から、本当に富士山が見えるかを計算する方法

AI要約

大人たちが算数の基礎知識に困惑する場面に出くわした時、桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の『算数力講義』から学ぶことができる。

1957年の大阪大学入学試験の問題を通じて、空間図形の交点の計算方法を学んでみよう。

さらに、日常の身近な事例を通じて、空間図形を理解する例も挙げられている。

全国各地にある「富士見町」から、本当に富士山が見えるかを計算する方法

食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。

長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。

『大人のための算数力講義』連載第30回

『難しい知識は不要…小学生でも解けるこの図形問題、あなたは解くことができますか?』より続く

最初に1957年の大阪大学入学試験問題の一つを紹介しよう。

【例題】

空間に相異なる3つの直線l, m, nがあって、どの2つも交わっているとき、交点の個数を求めよ。

「空間」と聞いただけで「ドキッ」とする人もいるようであるが、冷静に考えればやさしい問題である。

lとmの交点をPとすると、nがPを通れば答えは1個である。

nがPを通らなければ、nとlの交点をQ、nとmの交点をRとすると、QとRは異なる。なぜならば、Q=Rとすると、lとmの両方はPとQを通ることになるので、l=mとなって矛盾である。

以上から、交点の個数は1個か3個である。

昔、この問題を学生諸君に質問したとき、「1個」に気付かないで「3個」という誤答がいくつもあった。

ちなみに「3個」の場合は、3つの直線は1つの平面上にあるが、「1個」の場合は空間図形として3つの直線を捉えなければならない。それだけ空間図形は扱いが難しくなるのである。

以下、空間図形を平面で切った切り口に注目する例を挙げよう。

東京都の立川市、八王子市、東村山市、板橋区などには「富士見町」という町名がある。

現在では多くのビルが立ち並んでいることもあって、そのような町で富士山を見ることは容易ではないだろう。

しかし、もし空気の澄んだ晴天の日にそれらの町で遠望が利く場所に立つと、「本当に富士山は見えるのか」について考えてみよう。