もはや「生態系も壊滅的」に違いない…「一変した噴火様式」がもたらした西之島の、恐ろしいほどに「いびつな火砕丘」

AI要約

2019年12月、西之島で再び噴火活動が始まり、新たな火山島が大きく成長し始めた。これまでの活動痕跡が溶岩により埋もれ、生態系は大きな変化を迎えた。

地震・空振観測点も溶岩に覆われ、今後の西之島活動の予測が困難になった。活動の突如とした再開が、研究者たちに新たな挑戦をもたらした。

海域火山の観測記録は貴重であり、日本列島の海域火山の活動は世界的にも注目される。西之島の噴火活動は海域火山の代表例であり、さまざまな研究に寄与する。

もはや「生態系も壊滅的」に違いない…「一変した噴火様式」がもたらした西之島の、恐ろしいほどに「いびつな火砕丘」

新たな火山島の出現は、島を知り地球を知る研究材料の宝庫。できたての島でなくては見ることのできない事象や、そこから伝わってくる地球のダイナミズムがあります。そして、地球に生まれた島は、どのような生涯をたどるのか、新たな疑問や期待も感じさせられます。

今まさに活動中の西之島をはじめ、多くの島の上陸調査も行ってきた著者が、国内外の特徴的な島について噴火や成長の過程での地質現象を詳しく解説した書籍『島はどうしてできるのか』が、大きな注目を集めています。

ここでは、実際に現場を見てきた著者ならではの、体験や研究結果をご紹介していきましょう。今回は、2019年12月から始まった第4期の噴火活動における西之島の変化と、火山灰やドローンによるサンプル採取などのあらたな挑戦について解説していきます。

※この記事は、『島はどうしてできるのか』の内容を再構成・再編集してお届けします。

日本は世界有数の火山国であるとともに海洋大国でもある。海域での火山噴火や災害が必然的に起こりやすい環境にある。近年の小笠原諸島・福徳岡ノ場、西之島、硫黄島の噴火の際には激しく噴煙をあげる様子や溶岩が海に流れ出る様子など、時々刻々と変化する躍動的な火山噴火の様子がさまざまな媒体で報道された。

このように日本列島の海域火山は近年賑やかだが、世界的に見ると海域火山噴火に対する詳細な観測記録は珍しい。日本列島の事例は貴重で、地球上のさまざまな海域での火山活動の理解を進める上で重要な手がかりを与えてくれる。西之島の噴火はまさにその代表例だ。

先に公開した4回にわたる記事で、2013年以来活発な活動を続けている西之島で何が起きているのかを明らかにするために、さまざまな調査観測が行われていることを取り上げた。今回は、それに続いて、最新の西之島の姿に迫るとともに、これまでに登場した火山島も振り返りながら火山島のでき方とそこに生まれる脅威について探っていきたい。

2019年9月に環境省を主体とした総合学術調査が実施され、新たな西之島の地形地質や生態系が噴火活動によりどのように変化したのかが明らかにされたが、そのわずか3ヵ月後の2019年12月、突如として噴火が再開した。

まるで西之島が息を吹き返したかのように、2013年当初のような活発な活動が始まった。第4期活動(ちなみに業界では某映画シリーズのように「エピソード4」と呼んでいる)の開始だ。溶岩流出とストロンボリ式噴火により島は大きく成長し始めた。この噴火により、わずかに残されていた旧島、すなわち2013年以前の活動の唯一の痕跡が、ついに溶岩の下に埋もれてしまった。

2019年までにこの場所で確認された生物は死滅し、西之島の自然環境は大きな分岐点を迎えたのだ。2019年の上陸調査で労力をかけて設置された地震・空振観測点も溶岩に覆われ、西之島の活動を知る手段は完全に失われてしまった。こんなにもあっけなく全てが溶岩に埋まってしまうとは誰が予想しただろうか……。