「いざなぎ景気」の年平均成長率…正しいのはどっち:interrobang: マスコミも間違える数値計算を正しく解説

AI要約

算数の基礎から学び直す大人のための連載。相乗平均と相加平均の例を通して、年平均成長率の誤りについて解説。

いざなぎ景気の年平均成長率の誤報について、相乗平均と相加平均の違いを明確に示す。

相加平均を用いた場合の誤った成長率計算と、正しい計算方法について詳細に説明。

「いざなぎ景気」の年平均成長率…正しいのはどっち:interrobang: マスコミも間違える数値計算を正しく解説

食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。

長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。

『大人のための算数力講義』連載第26回

『ある鳥の数が1年めは1.5倍に、2年めは8/3倍に、3年めは2倍になった。この3年間の平均増加率は?』より続く

さて、 2006年の秋に「今の景気の拡大の期間は『いざなぎ景気』を超えた」というニュースがあった。

これは、02年2月に始まった景気拡大が06年11月で58ヵ月目となり、1965年11月から4年9ヵ月にわたって続いた「いざなぎ景気」を超えたことを指している。

そのときのニュースで、「いざなぎ景気」の年平均成長率が11.5%のものと、14.3%のものの二つがあった。

当時、この件を不思議に思って考えたところ、前者は相乗平均の発想で正しいものであるが、後者は相加平均の発想で誤ったものであることがわかった。06年11月の当時、そのような誤った報道をしたマスコミ数社に上記の説明を丁寧に伝えたが、「いざなぎ景気の年平均成長率14.3%は誤りで、正しくは11.5%」という訂正の記事やコメントは見聞きしなかった。

そこで少し間を置いてから、雑誌や著書に年平均成長率の説明を書いたことを思い出す。

「いざなぎ景気」では、4年9ヵ月間に67.8%成長した。06年11月頃の新聞やテレビ報道などにあった、「いざなぎ景気」の年平均成長率は14.3%という説は、次のようにして求めたことが判明した。4年9ヵ月は4.75年なので、

67.8÷4.75=14.27……

これは相加平均の考え方ゆえ、誤りである。実際、毎年14.3%ずつ成長したとすると

1.143の4乗=1.143×1.143×1.143×1.143=1.70……

となり、4年9ヵ月間どころか4年間ですでに70%を超す成長をしたことになってしまう。

いざなぎ景気の年平均成長率は11.5%が正しく、それは次のようにして導かれるが、「四半期」という言葉を先に説明しておく。

四半期はGDP(国内総生産)に関するデータの発表等で普通用いられるものであり、 1年を1月から3月、4月から6月、7月から9月、10月から12月の4期に分けたうちの一つを意味する。