「馬上槍試合ゾウムシ」は体重の差が26倍もあると判明、普通は3倍前後、どういうこと?

AI要約

パナマの熱帯雨林で戦う馬上槍試合ゾウムシの姿や生態について、米テキサス大学の研究で明らかになったことを紹介。

馬上槍試合ゾウムシの個体差が他の昆虫や脊椎動物よりも大きく、その特異な頭部の形状が理由であることを述べる。

倒れたイチジクの木に集まり、メスをめぐる熾烈な戦いを繰り広げる馬上槍試合ゾウムシの生態について詳しく説明。

「馬上槍試合ゾウムシ」は体重の差が26倍もあると判明、普通は3倍前後、どういうこと?

 パナマの熱帯雨林でイチジクの木が倒れると、奇妙な形の昆虫がどっと集まってきて戦いを始める。英名「ジャウスティング・ウィービル(学名 Brentus anchorago)」で、直訳すると「馬上槍試合ゾウムシ」だ(編注:馬上槍試合とは中世欧州でよく行われた騎士の競技)。このゾウムシの頭部は騎士が持つ槍のような形をしていて、オス同士がメスをめぐって争う際に、相手をはじき飛ばすのに使われている。

 見た目だけでも十分印象的だが、米テキサス大学オースティン校の進化生物学者で、スミソニアン熱帯研究所の研究員であるウマット・ソムジー氏らが野生の馬上槍試合ゾウムシの成虫を採集して測定したところ、最大の個体は最小の個体より約26倍も重いことが明らかになった。論文は2024年6月20日付けで学術誌「Evolution」に発表された。

 彼らは比較のために他の11の目(もく)の昆虫も調べたが、成虫の体重の差は3倍前後であることが多かった。哺乳類や鳥類などの脊椎動物にも調査範囲を広げても、同じ種の差はこれよりはるかに小さかった。なお、これより個体差が大きい生物は、同じくゾウムシの仲間のキリンクビナガオトシブミ(Trachelophorus giraffa)しかいない。

 彼らはなぜ倒れたイチジクに集まるのか。「イチジクの木は、倒れるときにある種の揮発性物質を放出します。これを嗅ぎつけた甲虫たちが森じゅうから集まってきて、倒木にとまります。ここが彼らの産卵場所になるからです」と、ソムジー氏は言う。

 メスをめぐる戦いに決着がつくと、勝ったオスはメスと交尾する。メスは倒木に穴をあけて、中に受精卵を産みつける。その間、オスはメスの体の上に自分の頭部をのせて、ほかのオスが寄ってこないようにする。

 馬上槍試合ゾウムシの大きさの差のほとんどは、その槍状の頭部の大きさに由来している。最大級のオスの槍は、体長の69%を占めていることもある。

「大きなオスが歩く姿は、ぎこちないほどです」と、研究チームを率いたソムジー氏は言う。「何かを乗り越えるときは、特に苦労しています。これは、ボクサーが体の半分以上の拳をもっているようなものです」