ますます凶暴化するクマ対策は待ったなし!人間が駆除、放置したシカを餌に“肉食化”するクマも出現

AI要約

クマの出没件数が増加の理由として、個体数の増加が挙げられる。ヒグマとツキノワグマの個体数は30年で2倍以上に増加した。さまざまな要因が重なり、クマの数が飛躍的に増えたことが背景にある。

ヒグマは春グマ駆除廃止や主要な食物資源の低下により、人への警戒心が薄れ、集落周辺まで分布域が拡大した。ツキノワグマも林業や狩猟の減少などが要因で集落周辺に生息域を広げている。

ヒグマの推定個体数は30年間で2倍以上に増加し、ツキノワグマも増えていると推測される。高齢化や林業の衰退など共通の要因がクマの個体数増加に影響している。

 今年もクマの出没情報が各地で相次ぎ、過去最高だった令和5年度の2万3669件(北海道を除く)を上回るペースだという。北海道以外の出没エリアは東北地方が全体の約6割(1万3138件)を占め、特に岩手県が5818件、秋田県が3663件と際立っている。一方、昨年の北海道での通報件数は4055件で、これも過去最多だった。クマ出没、被害の最新状況と、今後必要不可欠な被害防止対策について、北海道をはじめ全国の山間部でのアウトドアライフを長年続けてきたジャーナリストの山田稔氏が検証する。

■ 30年で2倍以上に増加したヒグマの推定個体数

 なぜ、こうもクマの出没件数が増えたのか。ひと言でいえばクマの個体数が増えすぎたからである。国の「クマ類保護及び管理に関する検討委員会」における主だった分析を抜粋してみよう。

 【ヒグマ】

・春グマ駆除廃止による個体数増加・分布拡大、林業従事者や狩猟者の減少等により人への警戒心が薄れ、集落周辺まで分布域が拡大

・森林から連続する緑地や河川が市街地への侵入経路

・秋期の主要な食物資源の量が大きく低下する時に、行動圏が変化・拡大。食料を目指して低地や集落へ出没

 【ツキノワグマ】

・林業や狩猟、里山利用の減少により、人への警戒心が薄れ、集落周辺まで分布域が拡大

・人口減少・高齢化による人間活動の低下、耕作放棄地の拡大、放任果樹の増加等により、人の生活圏周辺が生息に適した環境へ変化

・果樹等に誘引され、森林から連続する緑地を利用し市街地へ侵入

 高齢化、林業の衰退、ハンター減少など共通項目が多い。はっきりしているのは、こうしたさまざまな要因が重なり、この数十年間でクマの個体数が飛躍的に増えたことである。

 ヒグマは平成15年度と30年度の比較で、分布域は1.3倍に拡大し、推定個体数(令和2年度)は中央値1万1700頭で、30年間で2倍以上に増加した。

 ツキノワグマは本州、四国の33都府県に恒常的に分布(東京都にもいる! 九州は絶滅)。平成15年度と30年度の比較で、分布域は約1.4倍に拡大した。

 ツキノワグマの推定個体数については、「本州の多くの地域で増加または個体群は安定化」とあるが、具体的な頭数表記はない。過去の文献(2011年)には約1万3000頭から2万1000頭とある。それよりも増えているのは確かだろう。