ふるさと納税 見直し「必要」39% 競争緩和、格差解消求める 福島県内59市町村アンケート

AI要約

福島県内の59市町村に対して、ふるさと納税制度に関するアンケート調査が行われた。自治体間の競争激化を背景に、23市町村が制度の見直しが必要とする声が挙がっている。

寄付金の受付や返礼品の開発などによる事務負担や人手不足への支援が必要とされており、返礼品の創出や情報発信の支援を求める声もある。

地域内での生産やサービスを基準とした返礼品の提供が求められているが、返礼品の過度な競争による自治体間の格差や、福島県特有の問題点に対する配慮も必要とされている。

ふるさと納税 見直し「必要」39% 競争緩和、格差解消求める 福島県内59市町村アンケート

 福島民報社は、ふるさと納税について県内59市町村へアンケートを行った。課題や国に求めたいことを尋ねたところ、自治体間の競争激化を背景に23市町村(39・0%)が制度の見直しが必要とした。ふるさと納税は自治体の貴重な財源となっており、返礼品の扱いなど国はこれまでも制度の改善を繰り返しているが、各市町村は「競争の現状は変わっていない」などとして競争の一層の緩和や自治体間の格差解消に向けた制度の確立を望んでいる。

 ふるさと納税で国に支援を求めたい課題に関する回答は【グラフ】の通り。制度は都市部と地方の税収格差を是正する目的がある反面、返礼品が充実している自治体への寄付集中が長年、問題視されてきた。「競争激化の緩和に向けた制度の抜本的な見直し」と答えた23市町村には大玉村や下郷町などの町村だけでなく白河市や伊達市などの市部も含まれている。

 「事務負担・人手不足の解消への支援」は15市町村が必要とした。制度の利用が増えるにつれ寄付の受付や返礼品の開発など職員の負担は大きくなっており、ある市町村は「対応に忙殺されている」と明かした。納税額の増加に向け、魅力的な返礼品の創出への支援を8町村が訴え、効果的な情報発信への支援を5市町が求めた。

 制度を巡っては、地場産品と言えない返礼品の例が全国で相次ぎ、国は「地域内で生産された物品やサービス」などの基準を昨年10月に設けた。ただ、多くの人の関心を引く返礼品を地元だけで用意しなければならなくなり、市町村からは「自治体の負担が増えているだけ」との意見が複数あった。白河市は「過度な返礼品競争により、自治体間の格差は広がっている」と指摘。只見町は「都市部と地方で返礼品の種類に格差が生じている」とした。二本松市は大企業の工場がある自治体との差の改善を要望した。

 福島県特有の問題点を挙げる市町村もあった。浪江町は東京電力福島第1原発事故によって町内の事業者が避難先で再開していることについて「地域内の商品と見なされない傾向にあり、やむを得ずの事情を理解してほしい」と、被災地への配慮を求めた。

 県市町村財政課は「国の見直しは制度の適正な運用のため必要なものと認識している」とし、「引き続き、市町村が適切な運用をできるよう支援・助言していく」としている。

※ふるさと納税制度 出身地や応援したい自治体に寄付すると、寄付額の2千円を超える額が住民税と所得税から差し引かれる制度。2008(平成20)年に始まり、昨年度の全国の寄付総額は初めて1兆円を超えた。県内59市町村への昨年度の寄付額は88億6646万円で4年連続で過去最高を更新。過熱する自治体間競争を背景に、総務省は返礼品を地場産品に限定するなど、制度の適正化に向けた見直しを繰り返している。