仙台の厚切りカツ丼の名店が10日に閉店 「東一連鎖街」時代から80年の歴史に幕

AI要約

人気の飲食店「ひさご」が80年の歴史に幕を閉じることが決まった。

コロナ禍により売り上げが減少し、体力の衰えもあり、2代目店主が閉店を決断。

閉店に伴い、長年のファンが名店の味を惜しんで訪れており、感謝を込めて最後まで営業を続ける。

仙台の厚切りカツ丼の名店が10日に閉店 「東一連鎖街」時代から80年の歴史に幕

 肉厚なカツ丼が人気の飲食店「ひさご」(仙台市青葉区一番町4丁目)が10日、閉店する。戦後、バラックの連なる「東一連鎖街」に出店して約80年、働く人々の胃袋を満たしてきたが、コロナ禍以降は売り上げが減少。2代目店主の鈴木正孝さん(69)は体力の衰えもあり、のれんを下ろすことを決めた。(せんだい情報部・門田一徳)

[東一連鎖街]戦後の引き揚げ者らのバラックが始まり。東一番丁通から稲荷小路まで東西に走る小路4本に、約60店が軒を連ねた。建物の老朽化などから再開発が決まり2009年、跡地に商業ビル「TICビル」が開業。連鎖街の4店がビルに入居したが、ひさごの閉店で「アベ模型」のみになる。

■「ひさご」コロナ禍、体調不良で決断

 看板メニューは、豚肉の厚さが約2センチもあるカツ丼(1100円)。提供を始めた1978年から分厚さが評判になり、薄くできなくなったという。「客の8割はカツ丼を頼む」と、鈴木さんの妻あつ子さん(68)は説明する。

 鈴木さんの父正記さんが戦後間もなく、東一連鎖街に開業した。鈴木さんは高校卒業後すぐ店を手伝い始め、2年後、結婚したあつ子さんが加わった。

 全盛期はバブル経済の90年ごろ。東北一の繁華街、国分町の得意先から出前の注文が次々と入り、年3000万円の売り上げがあったと鈴木さんは懐かしむ。

 コロナ禍で飲食店が営業を自粛するなどして出前の需要が減り、そのまま回復しなかった。鈴木さんは2020年に脳梗塞を発症し、無理が利かなくなった。

 8月20日ごろ、なじみの客に閉店を伝えると、交流サイト(SNS)などで情報が拡散。名店の味を記憶に残そうとファンが訪れ、ここ数日は昼時に30人ほどの行列ができるという。

 4日は開店時に12人が並び、7席のL字カウンターはすぐ満席に。カツ丼は約1時間半で売り切れた。

 泉区の会社員高橋望さん(60)は、東一連鎖街の時代から28年通う。「カツ丼一択で食べに来た。サラリーマンの聖地のような店で、閉店は残念」と惜しむ。

 普段トンカツは1日40食ほど仕込むが、10日まで約70食に増やす。鈴木さんは「気力も体力も限界だが、閉店まで全力で働き、ひさごの味をお客さんに目いっぱい楽しんでもらいたい」と感謝を込める。

 営業時間は午前11時~午後6時。8日の日曜も特別に店を開ける。