島根県立大社高校の魔曲「サウスポー」の応援力 19日、夏の甲子園準々決勝で神村学園と対戦

AI要約
高校野球の応援曲「魔曲」と呼ばれる存在について第106回全国高校野球選手権大会における島根代表・大社の活躍大社の快進撃を支える熱い応援とサウスポーの歌唱について
島根県立大社高校の魔曲「サウスポー」の応援力 19日、夏の甲子園準々決勝で神村学園と対戦

 「魔曲」と呼ばれる応援曲が高校野球にはあるという。メロディーが流れると球場を取り込み、味方打線を奮起させ、大量得点や逆転を呼ぶ、まさに魔物のような曲。智弁和歌山、智弁学園(奈良)の「ジョックロック」に代表される。

 熱戦が繰り広げられている第106回全国高校野球選手権大会。32年ぶりの出場を決めた島根代表の大社は、優勝候補の報徳学園(兵庫)を下し63年ぶりに初戦を突破。15日の2回戦は創成館(長崎)、17日の3回戦は早稲田実業(西東京)を破り、初めて夏3勝をあげた。

 この大社の快進撃を後押ししているのが、石飛文太監督が「感謝してもしきれない」と口にしたアルプススタンドの応援。創成館との試合も、応援カラーの紫色のメガホンを手にした多くの人が地元をはじめ全国から駆け付け、吹奏楽部の演奏とともに、声を張り上げた。

 中でも攻撃時、得点圏にランナーを進めた時に流れるピンクレディーの「サウスポー」。高校野球の応援では定番だが、もはや大社の魔曲と言ってもいいのではないか。

 このサウスポー、攻撃時は通常立って応援するが、いったん静かに座る。するとパーカッションの「タンッタンッタンッタンッ」という軽快なリズムが響き、静寂を打ち破ってトランペットが「ティーティーティーティー ティティティババババッ ティティティティババババッ」と前奏の前段を吹いたところで、応援団は勢いよく立ち上がり「イエェェェェェイ!」と大声を出して加勢する。ため込んだエネルギーを爆発させるように。

 そして前奏の終わり際に声をそろえて「お前が決めろよ!」と歌った後はメガホンを振り上げて「オイッ! オイッ!」の掛け声。<弱気なサインに首をふり 得意の魔球を投げ込むだけよ そうよ勝負よ>の部分を「今だチャンスだかっ飛ばせ 大社打線の意地を見せろよ 燃えろよ大社」と替え歌し、「かっせ かっせ ◯◯(選手名)」と続ける。

 これがもう最高潮に盛り上がるのだ。15日の2回戦延長10回表タイブレークの攻撃では、「サウスポー」のループで応援。交流サイト(SNS)では「大社の応援がすごすぎる」「夏2勝の原動力は間違いなく一体感ある大音量の大応援団」と話題を呼んだ。

 それはもう必然だ。気迫の投球、執念のスクイズなど泥臭いプレーを地で行くナインに謙虚な指揮官、32年ぶりの甲子園出場に63年ぶりの初戦突破、初の夏3勝という学校関係者の積年の悲願。いくつもの「推せる」要素が重なってアルプスから、テレビの前から一意専心「大社ガンバレ」と声が上がる。そのエネルギーが結集し、共鳴するのだろう。

 卒業生として甲子園での応援に加わった。大社ナインと応援の「無限大の力」に触れ、試合終了とともに、感極まって涙があふれた。校章の入った白いタオルを掲げながら、あんなに大きな声で気持ちよく校歌を歌ったことはこれまでにない。ちょっとだけ後悔しているのは、掲揚された校旗を見逃したこと。校歌を歌うのに夢中だった。

 いや、また見ればいい。19日、大社は神村学園(鹿児島)とベスト4入りをかけて闘う。応援団の熱い夏も、まだまだ終わらない。