神頼みでない…大社高の躍進支える練習 夏の甲子園107年ぶり2勝

AI要約

大社(島根)が107年ぶりに全国高校野球選手権大会で2勝を挙げ、地元出身者が躍進。出雲大社での必勝祈願や選手の情熱が注目された。

地元期待が高まる中、大社は32年ぶりの夏の甲子園出場を果たし、執念の共通認識がチームを支えた。

独自の練習方法「昭和デー」も注目を集め、選手たちが困難に立ち向かうメンタルが形成された。

神頼みでない…大社高の躍進支える練習 夏の甲子園107年ぶり2勝

 107年ぶりに全国高校野球選手権大会で2勝を挙げた大社(島根)。学校は島根県出雲市にある学校は縁結びの神社として名高い出雲大社から近く、試合前の必勝祈願が恒例となるなど、なじみが深い。ただ、地元出身者が大半の県立校が今大会で躍進したのは、決して「神頼み」ではなく、選手たちの情熱と、いっぷう変わった練習のたまものだった。

 ◇「出雲大社近辺の盛り上がりがすごい」

 1回戦は今春の選抜高校野球大会で準優勝した報徳学園(兵庫)に3―1で勝利。創成館(長崎)との2回戦も、延長十回タイブレークの末に5―4で競り勝った。5点目を園山純正選手(3年)のスクイズでもぎ取るなど、1点を積み重ねる手堅い野球が光った。

 夏の島根大会前には毎年、選手らが出雲大社の本殿に集まって必勝祈願をする。「国譲り」の神話で知られる稲佐の浜の砂を持ち帰り、出雲大社でその砂を清めて、監督の体や選手のバットにまぶして試合に臨むという。

 32年ぶりの夏の甲子園出場を果たし、石飛文太監督は「出雲大社近辺の盛り上がりがすごい」と地元の期待を感じている。県内では上位校の常連だっただけに、「甲子園を逃すたび、地元の希望が失望に変わっていた。(今年は出場を決めて)『やっとだ』『信じられない』という思いが地元にある」と話す。

 選手のほとんどが県内中学の出身で、「地元で甲子園を目指したい」との思いで集まった。石飛監督は「彼らは執念がすごい。『何が何でも甲子園』を掲げ、それに対して妥協なく取り組んできた選手たち」と胸を張る。

 石飛監督自身も大社のOBだ。選手時代は内野手で、現在は国語の教諭を務める。

 ◇「僕らが新しい伝統を築いていく」

 大社が力を付けた理由の一つに、チームが「昭和デー」と呼ぶ練習がある。

 月に1、2回ほど、大雨の日に合わせ、30分ほどグラウンドでノックに取り組む。泥まみれになりながら、ぬかるんだ地面で不規則に弾むボールへ頭から飛び込む。ミスをしたら「行ってきます!」と叫んでボールを追いかける。

 この練習を始めたきっかけは、夏の甲子園に前回出場した32年前のOBを外部コーチに招いたことだった。「僕らの身近で甲子園を知る人は、32年前に出たOBしかいない」と石飛監督。当時、雨の中のグラウンドでノックをしていたと聞き、今年4月29日の「昭和の日」に取り入れたため、「昭和デー」と名付けられた。

 効率的な練習を重視する風潮が高まる中、「昭和デー」は時代の流れに逆行するようにも映る。

 だが、園山選手は「何が何でもボールに追いつくというメンタルを、甲子園で全員が発揮できている。『この練習を乗り越えたら絶対、試合に勝てる』という自信を持てている」と言い切る。

 1898(明治31)年に創立された伝統校。ただ、石飛監督の「僕らが新しい伝統を築いていく」との言葉通り、今大会の躍進が大社の新たな歴史の一歩となる。【深野麟之介】