松波総合病院が腹腔鏡手術支援ロボット導入 助手いらず医師の省力化へ

AI要約

岐阜県の松波総合病院が県内初となる支援ロボット「ANSUR」を導入し、1人で腹腔鏡手術が可能になった。

外科医の減少や労働環境の過酷さなどが背景にあり、手術の安全性と医師の働き方改革の両立を目指す。

時間外労働の規制に対応し、短縮された労働時間で質の高い医療を提供する取り組みが進められている。

松波総合病院が腹腔鏡手術支援ロボット導入 助手いらず医師の省力化へ

 松波総合病院(岐阜県羽島郡笠松町田代)は、従来より少ない医師数で腹腔鏡(ふくくうきょう)手術を行える支援ロボット「ANSUR(アンサー)」を県内で初めて導入した。これまで3人の医師が必要だった胆のう摘出や大腸がんなどの手術が、1人で可能になる。長時間労働などを理由に県内の外科医が減り続ける中、木村真樹外科部長は「手術の安全性や質の高さを保ちながらも、医師の働き方改革を進めていきたい」と見据える。

 ANSURは国立がん研究センター東病院などが開発し、2023年に承認を取得。執刀医がアームやペダルで指示を出し、これまで2人の助手医師が行っていた鉗子(かんし)や内視鏡カメラの操作をロボットが担う。人間以上の高度な技術提供を目指す支援ロボット「ダヴィンチ」などと異なり、医師の省力化に重点を置く。

 厚生労働省の三師統計によると、22年の医療施設従事医師数は4505人で、過去22年間で1・35倍に増えた。一方、外科に限ると00年の369人に対し、22年には210人と3分の2以下に減少。木村部長は理由を「時間外労働が多く、過酷な労働環境であることが一因だろう」と推測する。

 今年4月から働き方改革関連法に基づく時間外・休日労働の上限規制が医師にも適用され、松波総合病院でも働き方の改善を急ぐ。外科には現在16人の医師が在籍。外来診療があるためまとまった医師数を確保することが難しく、手術室の稼働率が低かった午前中に、外来の合間を見てANSURを用いた手術を行う。午後は緊急手術や術後経過の診療などに対応することで、1人当たりの労働時間を短縮する狙いだ。

 今月下旬に初めての手術を行う予定。ロボット操作には日本内視鏡外科学会などの技術者認定がいるため、現時点では木村部長のほか1人が可能だが、今後増えていく見込みという。木村部長は「操作に慣れてしまえば、人間が行うのと同じように手術できる。今後も手術の増加が想定される中、医師の働き方も考えながら質の高い医療を提供していく」と話した。

 【腹腔鏡手術】 腹部に開けた小さな穴からカメラや手術器具を入れ、カメラ映像を見ながら行う手術。腹部を切り開く開腹手術よりも出血や傷痕が少なく術後の回復が早いことから、近年増加している。