がんになりやすい「リンチ症候群」 12年前診断された広島市の女性、仕事続け出産も

AI要約

広島市の女性が12年前にリンチ症候群と診断され、がんと闘いながらも前向きに生きる姿を紹介。

がんの早期発見や予防のために遺伝子の検査を受け、手術を重ねながらも仕事を続ける女性の強さに感銘を受ける。

リンチ症候群の遺伝リスクや娘たちへの伝え方についても言及。

がんになりやすい「リンチ症候群」 12年前診断された広島市の女性、仕事続け出産も

 大腸や子宮などにがんを発症しやすい遺伝性の「リンチ症候群」。広島市の女性(49)がそう診断されたのは12年前のこと。生まれ持った遺伝子の変異が原因だ。初めてがんが分かったときは戸惑いもあったという。だが、情報を集めるうちに意識は変わっていった。「この病気と分かっていれば、検査でがんの早期発見も予防もできる」。出産や仕事など、患者の選択肢を増やしていけるという。

 女性が最初のがんを患ったのは、34歳の時だった。職場の検診で引っかかり、南区の広島大病院へ。大腸がんと告げられた。術後は半年間、飲み薬の抗がん剤を処方されたが、「幸い、副作用もなくて」。翌年には第1子となる長女を産んだ。

 主治医の勧めで遺伝子の検査を受けたのは、その2年後だった。医療保険が使えず、当時は数十万円の費用が要ったが、はっきりさせたかった。結果はリンチ症候群。「やはりね、と思いました」と女性は言う。自身の父は42歳の時に悪性リンパ腫で他界。父のきょうだいも6人中3人が若くしてがんで亡くなっていた。

 リンチ症候群は大腸や子宮、胃などにがんを発症するリスクが一般の人より高い。女性は大腸、子宮、胃などの検査をこまめに受けるようになった。「面倒だけど、もう怖くはない」と女性は言う。「だって、がんの研究はすごく進んでる。見つかれば、取ってもらえばいいんです」

 実際に昨年、次なる手術を受けた。いつもの検査で子宮内膜に初期のがんが見つかったためだ。女性はすでに次女も出産していた。子宮と卵巣は全摘。おなかを切らずに小さな穴だけ開ける施術で、退院の1週間後には職場に復帰できたという。

 女性はその後も、他の臓器の検査を受け続けている。「人が受けないような詳しい検査も受けている。私、誰より健康なんじゃないかと思うんです」。リンチ症候群が親から子へ遺伝する確率は50%。娘2人が成人し、がんのリスクが上がり始める頃までには、病気のことを告げるつもりだ。

 女性は技師としてフルタイムで働いてもいる。「仕事を続けていてよかった。くよくよ悩む暇もないです」と笑う。「娘たちにも仕事をあきらめないでって伝えたいです」