【大ゴッホ展開催】千載一遇の好機(7月31日)

AI要約

神戸市が2026年に「大ゴッホ展」を開催することを発表した。展覧会は福島、神戸、東京の3会場で巡回し、アートセラピー事業や被災地支援につなげる意義がある。

展示はフィンセント・ファン・ゴッホの作品を中心に展開され、異なる期間で最高傑作の展示や国宝の展示が予定されている。

オランダと福島県の関係が深く、アート教育やアートセラピー事業が展開される中、展覧会は震災からの復興を支えるエールとなる。

 「大ゴッホ展」の開催を神戸市が発表した。福島県立美術館で2026(令和8)年2月から5月まで繰り広げられる同じ展覧会を、前年の9月から神戸市立博物館で開く。福島開催後は5月末から8月まで上野の森美術館(東京都)で展示する。本県は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から15年の節目で、神戸は阪神大震災から30年となる。本県をはじめ被災地などでオランダの至宝を鑑賞できる意義に改めて思いをはせ、国内外からの誘客で元気発信につなげたい。

 今回の企画はフィンセント・ファン・ゴッホのコレクションで世界的に有名なオランダのクレラー・ミュラー美術館の全面協力で実現する。神戸に続き、上野の森美術館も開催告知をし、全容が明らかになった。3館巡回の形で2期にわたって開く。1期目は約20年ぶりに来日する最高傑作の一つ「夜のカフェテラス」を中心に神戸、福島、東京の順で巡る。2期目はオランダの国宝と称され、約70年ぶりの国内展示となる「アルルの跳ね橋」が核となる。2027年2月から神戸、6月から9月まで福島、10月から翌年1月まで東京の予定だ。

 本格的なゴッホ展が日本で最初に開かれたのは1958(昭和33)年にさかのぼる。今回と同様、クレラー・ミュラー美術館から提供された。東京、京都の両会場で合わせて90日間の展覧会に熱狂する人々の姿が当時の美術専門誌に紹介されている。戦争で疲弊した国民の心が、世界的名画の力で少しでも癒やされればとの両国政府や関係者の思いがあったという。戦後の苦境から立ち上がろうとする日本国民を励ましたゴッホの同じ作品群が、今度は震災からの復興に歩む人々に寄り添う。改めて大きなエールを届けてくれるに違いない。

 安積疏水開削事業に尽力したオランダ人技師ファン・ドールンをはじめ本県とオランダの関係は深い。今月中旬、現地を訪れた内堀雅雄知事に、クレラー・ミュラー美術館のベンノ・テンペル館長はアート教育を含めた応援を約束した。世界的名画を用いた臨床応用としてアートセラピー事業を実施する福島医大の取り組みも全国から注目されている。千載一遇の好機だ。どのように生かすか。知恵を出し合うときだ。(関根英樹)