「変わらぬ味は心の拠り所」被災した輪島市の老舗豆腐店 地元で移動販売再開

AI要約

1月の能登半島地震で被災した輪島市の豆腐店が半年ぶりに移動販売を再開。

地元の人々の心の支えとなっている豆腐の味。

地震後復興を目指し、住民たちとのつながりを取り戻す。

「変わらぬ味は心の拠り所」被災した輪島市の老舗豆腐店 地元で移動販売再開

1月の能登半島地震で工場が被災した輪島市の老舗豆腐店が、半年ぶりに地元での移動販売を再開しました。

まちの姿が変わり果てようとも、変わらぬ豆腐の味が住民たちの心の拠り所となっています。

倒壊した家屋のそばを駆け抜ける、ブルーの軽トラック、

「さいはての谷内のおとうふ」

輪島市でおよそ60年、移動販売を続けてきました。

さいはての谷内のおとうふ 谷内孝行さん「一応貼り紙はしてきたんですけど…今日来るっていうのを知らない方は沢山いると思います」

元日の地震では、工場内にある機械の多くが倒れるなどして稼働できず、およそ4か月間の休業を余儀なくされました。さらにこの地域では、住民の多くが市外へ2次避難し、13人いた従業員も半数近くが退職。

店は一時、存続の危機に立たされました。

谷内孝行さん「工場が潰れていれば『廃業』ということも頭にはよぎった」

あれからおよそ半年。仮設住宅の完成に伴い、まちには少しずつ、人の姿が戻りつつありました。

谷内孝行さん「久しぶりにお顔見れるのが楽しみでもありつつ、どういう状況なのかを考えると緊張しますね。売るというよりも、会いに行きたかった。」

7月17日、谷内さんが、豆腐を積んで向かった先は、南志見(なじみ)地区です。

工場から車で20分ほどの距離にあるこの集落は、谷内さんにとって初めての移動販売で訪れた、思い出の場所。およそ半年ぶりとなる、地元・輪島での移動販売です。

仮設住宅の表札を頼りに、常連客を探して回ると…。

「お久しぶりです、桜井さん元気ですか?」「まあね!どうしたん」「豆腐売りに来た」「大谷さんの顔、見に来た」「やっと戻って来たんか」「今日からなんです」

トラックを囲むように、住民たちが続々と集まってきました。

仮設住宅に住む常連客は「(何を買った?)いつものゴマ豆腐と油揚げ。地震の後初めて会ったから懐かしかった」「ま~谷内さんのが良いわね。慣れとるからね、味が」

谷内孝行さん「人それぞれ、どういう状態になれば『復興』と言えるのかは違うと思う。自分ができることは小さなことでも、今まで食べていた豆腐を届けることが自分なりの復興に近づけるのかなって」

住民1人ひとりと顔を合わせ豆腐を売り歩く、昔ながらの「行商スタイル」は、

地震で離れ離れになった集落のつながりを再び取り戻す手段となりつつあります。