【欠席議員の報酬】住民の理解得る議論を(7月8日)

AI要約

議会を長期欠席している議員の報酬について、欠席理由によって支給額が問題となっている事例が議論を呼んでいる。

現行の規定では、欠席議員に対して減額や支給停止ができないことが課題とされており、規定の見直しが求められている。

地方議会での取り組みや専門家の意見を踏まえ、欠席議員への報酬扱いについて適切な対応が求められている。

 議会を長期欠席している議員の報酬はどうあるべきか。いわき市議会で病気を理由に1年以上欠席している議員に対し、1千万円を超える報酬・手当が満額支給されていた例は、他の議会にも通じる課題を投げかけた。会議への出席だけが議員活動ではないとはいえ、満額支給は適切なのか。議論を深めるべきだろう。

 いわき市では昨年2月の定例会から欠席が続く議員に対し、議員報酬と期末手当合わせて約1450万円(今年6月末現在)が支給された。減額や支給停止の規定が条例にないのが理由だ。議員は病気で意思疎通が難しく、家族は「議員活動ができないのを本人も申し訳ないと感じていると思うが、報酬の扱いはどうしようもない」と困惑しているという。白河市でも、健康状態を理由に昨年12月から約半年間欠席した議員に満額支給されている。

 受け取りの辞退や返還は公職選挙法で禁止する寄付行為に当たり、条例で減額や支給停止を定めるなどしない限りは満額が支払われる。病気の場合はやむを得ないとの見方もあるが、住民の理解が得られるかどうかの視点も大切だ。丁寧な吟味を求めたい。

 会津若松市議会は長期欠席者を対象に減額する条例を2016(平成28)年に制定した。伊達市や三春町でも条例化している。全国市議会議長会によると、全市の約3割に当たる247市で減額・支給停止の規定を定めており、本県は比較的少ないと言える。

 政治資金パーティーを巡る裏金事件や、国会議員の調査研究広報滞在費(旧文通費)の透明性確保の問題などを受け、議員の収入に対する社会の目は厳しさを増している。長期欠席者への満額支給については、減額や支給停止を受け入れる意思がありながら、条例に規定されていないばかりに批判されるような齟齬[そご]があるなら、見直してしかるべきではないか。

 地方議会に詳しい河村和徳東北大准教授の指摘は的を射る。欠席議員の報酬・手当に関する条例の必要性を指摘しつつ、出席したくてもできない議員に配慮した環境整備を優先すべきと訴えている。災害や出産などあらゆる状況を想定し、オンラインの活用をはじめ議員の発言、意思表示を確保する努力や工夫も欠かせない。(渡部育夫)