「なんて声を…」 佐世保高1同級生殺害事件から10年 元少女の異例の長期収容、終了へ<傷跡・下>

AI要約

高校1年の同級生を殺害し、医療(第3種)少年院に収容された元少女が、26歳まで収容を続けていた異例のケースが終了する。

専門家は、26歳までの収容が長いか短いか不明であるが、矯正教育を受けることの重要性を強調している。

再犯防止対策として、犯罪リスクを評価するツールや、犯罪要因を科学的に検証することが重要であるとの意見がある。

「なんて声を…」 佐世保高1同級生殺害事件から10年 元少女の異例の長期収容、終了へ<傷跡・下>

 高校1年の同級生を殺害し、医療(第3種)少年院に収容された元少女は今夏26歳になる。少年院は23歳未満までだが、第3種は精神に著しい障害がある場合、26歳になるまで延長を認める規定があり、2021年11月に収容継続が決定していた。異例の長期になった元少女の収容が終わる。

 23歳を超え収容が継続されたのは、少なくとも平成以降では初めてのケース。独協大法学部の柴田守教授(刑事法)は「26歳までという年齢が長過ぎるのか短過ぎるのかは分からないが、医療に限界はあるものの、できる限り収容して矯正教育を施すのは正しい」と見解を示す。

 長崎保護観察所によると、一般的に少年院を退所した少年(元少年含む)は家族が受け入れるが、家族の受け入れが困難な場合は本人の意思を尊重しながら更生保護施設への入所などを考える。施設へ入所後、保護観察官が出向き、必要な措置を取るという。

 しかし、元少女の医療少年院送致を決めた家裁決定は「生涯にわたって十分な対応を継続する必要がある」と踏み込んでいる。こうした状況を踏まえ、柴田教授は更生保護施設ではなく、「措置入院させるだろう」と予測している。

 再犯防止対策としては、成育歴などから犯罪リスクを可視化する「法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)」などの調査ツールに注目している。

 柴田教授によると、ドメスティックバイオレンス(DV)や不良的交友関係、親との関係性や精神状態など非行につながるか否かの要因は明らかになってきているという。元少女の場合も、父親を金属バットで殴打するなど親子関係の問題や母を病気で失った後の精神状態が取りざたされた。「非行要因を可視化し、科学的に検証することが重大犯罪を起こさせない社会づくりにつながる」と期待する。

 北松佐々町で自営業を営む男性(55)の店にはかつて、加害少女の一家が定期的に来店していた。最後に元少女が来たのは中学3年の時。一緒に来店していた父と会話をしていた記憶はなく、ずっと本を読んでいた。元少女には「元気に生きていってほしいけど、被害者のことを考えると複雑。もし会えるなら会ってみたいけど、何を聞けばいいんだろうか…」、今でも思い悩んでいる。

 加害少女の一家と親しかった佐世保市の50代女性は、元少女と事件の約1カ月半前まで2人きりで食事をすることがあった。「普通の少女だった。その子がなぜ-」。兆候は最後まで分からなかった。今でも夢に元少女が現れるという。無言で立っている元少女に声をかけたいと思うが、「なんて声をかけたらいいのか、10年たってもわからない」。

 7月26日、事件発生から10年を迎えた。