塩谷氏後任 袋小路の人事 衆院選に対抗馬? 静岡8区、悩む自民関係者

AI要約

自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、塩谷立氏が離党。自民党支部長不在の衆院静岡8区では後任人事に関して不透明な状況。党県連は早急に対処をする必要がある。

知事選直前に元副知事大村慎一氏が決起大会を行い、自民党内の支持を集めようと活動。塩谷氏の元秘書も関与。党本部の対応が注目されている。

塩谷氏は無所属での活動を始め、小選挙区での勝利を目指すが、次期衆院選での選挙戦には様々な意見が分かれている。

塩谷氏後任 袋小路の人事 衆院選に対抗馬? 静岡8区、悩む自民関係者

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡って塩谷立氏(衆院比例東海)が離党し、同党支部長が不在になっている衆院静岡8区。10日に新執行部体制をスタートさせた党県連は後任人事について早期に結論を出す意向だが、先行きは不透明だ。10期にわたって活動する塩谷氏が次期衆院選への出馬意欲を示す中で新たな候補を擁立すれば、自民票が割れて共倒れになる可能性がある。対抗馬擁立に対する党本部の方針は見通せず、地元の自民関係者は対応に苦慮している。

 知事選の投開票を2日後に控えた5月24日夕。党本部の推薦を受けた元副知事の大村慎一氏が浜松市中心部で決起大会を行った。終了後は繁華街を練り歩き、週末の夜を楽しむ市民に支持を呼びかけた。スタッフの中には1カ月前に離党した塩谷氏の秘書の姿も。関係者によると、浜松市長を4期16年務めた実績などから、市中心部で支持を拡大させている鈴木康友氏との差を縮めようと、県連関係者が選挙戦中盤になって塩谷氏側に支援を要請し、複数の秘書が陣営に入った。

 この際、次期衆院選では塩谷氏に対抗馬を立てないよう、県連側から党本部に進言するとのやりとりもあったとされる。知事選後、ある自民県議は「当初は離党したばかりでちゅうちょしたが、浜松で巻き返すには塩谷さんに頼るしかなかった」と振り返った。

 ■党本部の対応は

 塩谷氏は離党後、無所属で活動を始め、掲示されているポスターの「自由民主党」の文字をシールで隠した。ただ、JR浜松駅近くの事務所には党県連浜松市浜松中央支部などの事務局が継続して置かれ、外壁には党名が掲示されたまま。自民関係者との距離感はほとんど変わっていない。

 一方、党本部では森山裕総務会長が塩谷氏と同様に離党勧告処分を受けて離党した世耕弘成前参院幹事長(和歌山選挙区)について、改選を迎える来年の参院選では対抗馬擁立を見送るべきとの考えを示した。塩谷氏への言及はないが、対応が注視されている。

 浜松市内の自民関係者は「塩谷さんは長年、自民の衆院議員を務めた。後任を立てても票が割れて小選挙区で敗れ、比例復活できない可能性もある。最も避けなくてはいけないのは8区から自民系の国会議員がいなくなることだ」と危機感を募らせる。市議の一人は「塩谷さんが立候補するなら、これまでの関係もあるので当然応援する。ただ、後任が決まれば、そちらを支援せざるを得ない。とにかく後任の方針が決まらないと、全く動けない」と複雑な思いを語った。

 ■進退巡り賛否も

 前回選で塩谷氏は小選挙区で立憲民主党の源馬謙太郎氏との一騎打ちに敗れ、比例復活した。無所属での出馬が見込まれる次期衆院選は政党支援のない戦いを強いられる上、比例復活もなく、国政に残るには小選挙区での勝利しかない。

 後援会幹部は「裏金事件を巡る(塩谷氏への)自民党の対応は許せない。無所属だが、次もしっかりと支援する」と気勢を上げる。一方、別の後援会関係者は「前回も勝てなかったのに無所属で勝てると思っているのか。選挙に負けて引退では影響力が残らない」と厳しい目を向ける。その上で「解散・総選挙はいつあるか分からない。後任のためにも道を譲ってあげてほしい」と本音を漏らした。

 同選挙区には日本維新の会の新人寺嶋瑞仁氏、参政党の新人松下友樹氏も名乗りを上げている。