5人衆「コスパ求めず プロセス楽しむ 元気の源は仲間」全員85歳超 集大成の水彩画展

AI要約

大阪府枚方市で85歳を超える男性5人による水彩スケッチ展が開催され、最後の展示となる可能性がある。長年展示会を続けてきた理由とは。

展示スペースでの作品掲示作業や会員たちの経歴、活動内容、趣味の楽しみ方について。

スケッチする場所への車中の楽しさや会員間の絆、技術習得の取り組みについて。

5人衆「コスパ求めず プロセス楽しむ 元気の源は仲間」全員85歳超 集大成の水彩画展

老爺(ろうや)の集大成を見てください-。大阪府枚方市の市総合文化芸術センターで29日、全員が85歳を超える男性5人による水彩スケッチ展が始まった。20年以上前から展示会を開いていたが、新型コロナウイルス禍で中断を強いられ、寄る年波にも勝てず、19回目を数える今回が最後になりそうだという。もっとも、長く続けられたのは「過程の楽しさを知ったから」と、5人は口をそろえる。

開催初日を控えた今月28日、同センターの展示スペースで作品の掲示作業が行われた。天井部から金属のワイヤでつるし、鑑賞しやすいように額の位置を整えた。

「専門業者に頼んだんです」と、5人組の一人で同府寝屋川市の川口純男さん(85)。これまで会場は市内の交流サロンだったが、コロナ禍に閉館。今回は勝手が違う。展示会自体も4年ぶり。この間体力も相当衰えた。川口さんは「脚立から落ちようものなら、まさに命の危機ですから」と冗談とも本気ともつかない言い方で話す。

スケッチ同人のメンバーはほかに、講師役の薮田和義さん(85)=大津市、高島皓二(こうじ)さん(90)=枚方市、杉原哲夫さん(87)=同、菅村忠弘さん(87)=同。全員が大手化学メーカー「積水化学工業」(大阪市)のOBで、会の名前はラテン語をもじった「絵とせとら」だ。

薮田さんは同志社大スケッチクラブ出身で、元上司の高島さんに絵を勧めたのが同人活動につながるきっかけ。定年退職後のメンバーがそろい、平成12年、絵手紙を送り合うところから「シニアの趣味」が始まった。

スケッチは滋賀県内の里山の風景が主な対象。大津市在住の薮田さんの手引きだ。山あいの同市葛川坊村(かつらがわぼうむら)町や高島市マキノ町在原の集落、同市今津町椋川の家屋…。「戦前生まれにとって、懐かしく感じる日本のふるさとの姿」(高島さん)だ。

何よりスケッチする場所へ向かう車中が楽しい。1台の四駆に乗り合わせて世情を語り、体調の話など近況を報告し合う。昼食時もそう。道中のコンビニで弁当を調達しておき、野山や田畑でほおばる。ときに小川のせせらぎを聞きながら。「昨今コストパフォーマンスを求めがちだが、気の置けない仲間とのひととき、風景とじっくり向き合い、自己表現に至るプロセスが楽しい。それが元気の源」と薮田さんは言う。

もちろん、4人は画力アップにもいそしんだ。家屋の模型を作って屋根の影はどうできるのかを学んだり、スケッチ終わりには、先々の喫茶店で開かれる薮田さん即席の講習会で得たアドバイスを基に次に生かしたり。