やさしさと忍耐強さが必要な認知症の人の介護。93歳の介護職員「大切なのはその人の変化でなく<病気がそうさせている>と理解すること」

AI要約

令和5年版高齢社会白書によると、65歳以上の要介護者数は増加し、特に75歳以上で割合が高い。

誰もが要介護者になり得る超高齢化社会で、93歳の介護職員細井恵美子さんが毎日を明るく楽しく生きていく心得を紹介。

認知症の介護には専門的なサポートや細やかなやさしさが必要であり、病名による様々な特徴を理解し寄り添うことが重要。

やさしさと忍耐強さが必要な認知症の人の介護。93歳の介護職員「大切なのはその人の変化でなく<病気がそうさせている>と理解すること」

内閣府が公表する「令和5年版高齢社会白書」によると、令和2年度の65歳以上の要介護者数は平成22年度から約178万人増加し、特に75歳以上で割合が高くなっているそう。誰もが要介護者になり得る「超高齢化社会」の昨今ですが、特別養護老人ホーム「山城ぬくもりの里」顧問の細井恵美子さんは、93歳で現役の介護職員として働いています。そこで今回は、施設利用者に日々寄り添う細井さんが書き下ろした自著『93歳、支えあって生きていく。』から、毎日を明るく楽しく生きていくための心得を一部お届けします。

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◆「認知症」はさまざまな病名がある

認知症の人の介護は、ひと口にはいい尽くせません。

専門的なサポートを受けながら、細かい網にかかった無数の塵(ちり)を取り除くように、ていねいなやさしさと忍耐強さが必要です。

今まで、認知症という病気が疎(うと)まれてきたのは、病気そのものよりも、病気によって現れる多くの症状でした。

「認知症」とひと括りに呼んでいますが、「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」など、医学的に確定されたさまざまな病名があります。

それぞれに特徴がありますが、わかりやすい症状もあれば、複雑に絡みあって判断の難しい場合もあります。

◆認知症は、その人を責めない。指導や説得ではなく、ともに歩む。

介護は、まず健康なころのその人を良く知ることです。

加えて、それぞれの病気による特徴を頼りに、発病からの経過や病気の進行度を考え、その人に残されている身体能力や知的能力、精神状態を考察し、今までの暮らしに役立つ力を探り、再び実用できるように本人と一緒に努力をします。

病気の発見が早ければ、時に症状の回復も見られるようです。

適切なサポートを受けずに経過した場合、神経細胞や伝達機能の障害部位によって、あるいはその範囲によっては回復が難しく、症状を進行させてしまいます。

なにより大切なことは、症状はその人の変化でなく、“病気がそうさせている”ということを理解し、その人を責めないことです。

今まで通りに寄り添い、リズミカルなやさしい刺激を、持続的に送り続けること。

体操、散歩、手慣れた軽作業などで体を動かし、その人が日ごろ大切にしている思い出話などで場を盛り上げ、脳の活性化を図ります。

絵や習字、手芸、計算、スポーツなどを得意とする人もいます。

その人の文化的な生活体験を介護に生かし、やりたいこと、やれそうなことを見つけて実践してみましょう。

完成できると達成感が共有でき、信頼関係も深まります。