パンジャーブ人が毎週集う茨城・境町の寺院 恒例になった「神の門」で囲む食事

AI要約

日本国内でのスィク教の集団食の光景が紹介される。インド本国の総本山でも同様の食事が提供されていることが紹介される。

スィク教の教義であるランガルの実践について詳細が述べられる。神の門をくぐる者には等しく無料で食事が提供されることが強調される。

インド本国の総本山では1日7万5000人にも及ぶ参拝者が食事を提供されており、奉仕者たちが真剣に食事作りに取り組んでいることが述べられる。

パンジャーブ人が毎週集う茨城・境町の寺院 恒例になった「神の門」で囲む食事

インド、ネパール、バングラデシュ……、日本で出会うことが多いインド亜大陸出身の人たち。日本では普段、どんな食事をし、どんな暮らしをしているのでしょうか。インド食器・調理器具の輸入販売業を営む小林真樹さんが身近にある知られざる世界の食文化を紹介します。

広い座敷へとあらわれた、屈強そうなターバン姿の男たち。手にはそれぞれステンレス製の大きなバケツを持っている。その中身はあふれんばかりのダール・マッカニー(豆のバター煮)やサブジ(野菜の炒め煮)だ。

おもむろにそのバケツにお玉を差し込むや、横一列に並んだ人々の前に並べられた四角いターリー(皿)の上に、バシャリバシャリと注いで回る。続いて配られるのはアツアツのチャパティーだ。座っている人たちは、両手でうやうやしく受け取っている。

プラオ(炊き込みごはん)やキール(ミルクで炊いた甘い粥〈かゆ〉)、ステンレス製のコップの中にラッシーが一通り配られるやいなや、人々は黙々と食べはじめる。皿が空になる前に、列を一回りしてきた屈強な男たちが再び次々とおかわりをサーブしにくる。「バス(もう十分)!」といわない限り、おかわりは継ぎ足し続けられるしくみだ。

とても日本とは思えないこの光景は、まごうかたなき日本国内、それも外国人人口の多い東京や大阪といった大都市圏でもなく、茨城県猿島(さしま)郡境町という小さな町での恒例行事である。ここにグルドワーラー(神の門)と呼ばれる、スィク教の寺院があるのだ。

同じ光景を、私はかつてインド本国のアムリトサルにある総本山、ハリマンディル・サーヒブ(通称・ゴールデンテンプル)で見たことがある。「ランガル」と呼ばれるこの集団食は、数あるスィク教の教義の中でも最重要なものの一つの実践で、神の門をくぐるものには国籍、身分、宗教、男女の別なく、等しく一律に同じ食事を無料で、いつでも提供すべしと決められている。

寺院内陣には巨大な厨房(ちゅうぼう)が併設されていて、大勢の無給の奉仕者たちが真剣に食事作りにいそしんでいる。ここで食事をする参拝者は途切れることなく、その数、ざっと1日7万5000人といわれる。