天才時計師フランク・ミュラーの時計づくり。その志を未来のクリエーションへ。

AI要約

スイスの高級時計業界は世代交代の時期を迎えており、1980年代から1990年代に起業家たちが機械式時計ブームを牽引した。

フランク・ミュラーはこのブームの主役のひとりであり、創業からわずか30年で伝説となったブランドだ。

ニコラ・ルダース氏はホテル業界出身で、現在はフランク・ミュラーのCEOとして活躍しており、異色の経歴を持つ。

天才時計師フランク・ミュラーの時計づくり。その志を未来のクリエーションへ。

スイスの高級時計業界はいま、世代交代の時期を迎えている。今日の高級時計ブームの萌芽となったのは、1980年代から1990年代前半にかけて独立時計師や起業家たちの活躍により、老舗&名門時計ブランドへと波及した機械式時計ブームだ。

1958年にスイス時計の中心都市のひとつラ・ショー・ド・フォンに生まれ、ジュネーブ時計学校で3年間のカリキュラムをわずか1年で終えた天才時計師フランク・ミュラーはこのブームの最大の主役のひとり。そして彼が1992年に創立した高級時計ブランド「フランク ミュラー」もまた、この世代交代の時期を迎えている。創業からわずか30年あまりで、スイス時計界の伝説となったこのブランドを2021年からCEOとして率いるニコラ・ルダース氏に、ご自身のこと、そして「フランク ミュラー」の現在と未来について聞いた。

スイスの時計業界では、世界中からさまざまな人材が集まってトップマネジメントの地位に就いている。時計製造の現場からのたたき上げがいれば、プロダクトデザイン、マーケティング、金融のプロもいる。そしてこの20年あまり、目立っているのがファッションやIT業界の出身者だ。だが、ニコラ・ルダース氏の経歴は時計業界ではちょっと珍しい。なんとホテル業界からの転身だからだ。ルダース氏は1970年、スイスのローザンヌ生まれ。イギリスのウエストロンドン大学でホテル経営学を専攻。卒業後の1995年にロンドンの一流ホテル「フォー シーズンズ パーク レーン」に就職し、ホテルマンとしてのキャリアをスタートした。

「人よりちょっと遅いスタートで、最初はナイトスタッフとしての勤務でした。ただすぐにマネージャーに昇格させていただき、夜から昼の勤務になりました。ホテルのお客さまは各国の元首クラスなど、世界でも本当にハイクラスの、一流の方々ばかり。そうして親しくなったお客さまのなかには、カタールで『フランク ミュラー』の販売代理店を経営されている方もいらっしゃいました。振り返ってみると、そのときからご縁があったのかもしれませんね」

1999年にイギリスからスイスに戻ったルダース氏はジュネーブの「ル リシュモン」「デ ベルグ」など5つ星ホテルでマネージャーとして活躍。当時、日本の天皇陛下(現・上皇陛下)のジュネーブ滞在を担当したことは、自分のキャリアのハイライトのひとつであり、大きな誇りだという。2001年にはジュネーブ郊外、フランク ミュラー ウォッチランド グループの本社のあるジャントゥの近くにある、ジュネーブ屈指のラグジュアリーホテル「ラ レゼルブ」の立ち上げから運営まで経営陣のNo.2として関わり、ホテル業界でもトップマネジメントのひとりとなった。