「先進国では人口の5%が罹患」 感染症に代わって「増えている」病気とは

AI要約

自己免疫疾患とアレルギー疾患についての市民公開講座が開催され、免疫システムの乱れや最新治療について解説された。

感染症と免疫の関係、自己免疫疾患の増加要因、現代社会でのリスクについて学ぶ。

自己免疫疾患のリスク遺伝子とマラリアの関連、感染症の影響、免疫システムの進化について考察。

「先進国では人口の5%が罹患」 感染症に代わって「増えている」病気とは

 近年増加が続いている自己免疫疾患とアレルギー疾患をテーマとした市民公開講座「現代社会を健康に生きる-自己免疫疾患とアレルギーの最新医学」(体質研究会主催)が京都市で開かれた。自己免疫システムが乱れて暴走する背景と最新の治療について研究者が解説した。

 大阪公立大医学研究科の橋本求教授(免疫学、膠原(こうげん)病・リウマチ内科学)は「免疫学から学ぶ人類史」と題して、免疫と疾患の関わりを説明した。1918年から21年にかけて2億人が感染して5千万人が死亡した「スペイン風邪」など人類と感染症の歴史を紹介した。エボラ出血熱などのパンデミック(感染爆発)はコウモリが起点になり、マラリアはゴリラ由来の原虫が原因であるなど、パンデミックには人と動物との関わりがあることを指摘した。

 ジェンナーによるワクチンの発明や、公衆衛生学の発達、抗生剤の発見など感染症との闘いを振り返り、「世界はより清潔、快適、安全になったが、増えている病気がある」として、関節リウマチやクローン病、1型糖尿病などの自己免疫疾患と、気管支ぜんそくなどのアレルギー疾患が急増していることを示した。

 感染防御がリスクに

 自己免疫疾患は、感染症から自らを守る免疫システムが、何らかの手違いで自己組織を攻撃して生じる。「自己免疫疾患は800種に及び、先進国では人口の5%が何らかの自己免疫疾患に罹患(りかん)している」という。

 自己免疫疾患の一つで、体の各所で炎症や組織破壊が生じる難病「全身性エリテマトーデス(SLE)」について▽マラリア感染地域でSLEリスク遺伝子を持つ人の割合が多い▽SLEリスク遺伝子を持つことがマラリア重症化リスクを下げている▽SLE患者と家族はウイルス感染の抵抗因子として働くインターフェロンの活性が高い―ことをデータで示し、SLEリスク遺伝子を持つ人がマラリアから生き延びることでリスク遺伝子が集団の中で引き継がれた可能性を指摘した。人類は感染症からの生存に有利な免疫システムを獲得した一方で、「現代では自己免疫疾患のリスクにつながっている」という。