若年層や妊婦も容赦なく襲う高致死率の「人食いバクテリア」、冬場の感染急増に備えるには?

AI要約

日本で感染者数が急増している「人食いバクテリア」と呼ばれる感染症について紹介されています。

2024年の感染状況や致死率、感染者の特徴、基礎疾患などが詳細に述べられています。

怖さや厄介さ、感染のメカニズムについても語られており、必要な注意と予防方法が示唆されています。

 (星良孝:ステラ・メディックス代表/獣医師/ジャーナリスト)

 「人食いバクテリア」と呼ばれる感染症が日本で感染者が激増していることをご存じだろうか。

 コロナ禍が治まって以降、インフルエンザ、手足口病、RSウイルスなどさまざまな感染者の増加が問題になっているが、人食いバクテリア、正式には「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」も異例の感染者の急増を見せている。

 病名の通り、この感染症は人の命を高い確率で奪うことが特徴だ。

 詳しくは後述するが、簡単に言うと、細菌により筋肉が侵され、心臓や腎臓など内臓が破壊されるという病気だ。9月に公開された国立感染症研究所の週報によると、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は2024年第34週(~8月25日)までに1407人に上り、前年の第33週までの549と比べて2.56倍となった。24年の死亡者は既に100人を超えている。

 以下、グラフを使いながら、人命に関わる感染症の実態と、いかに注意すれば良いかを考察する。

■ 2024年流行の致死率は何%? 

 まずは異例の流行となっている2024年のデータをおさらいしよう。

 国立感染症研究所では6月までに国に届けられたケースに基づいて、年齢別の感染者数と死亡者数を公表している。以下の24年第24週(6月20日)までの期間の年代別の感染者や死亡者をまとめた図を見てほしい。青い棒が感染者数を示し、オレンジの棒が死亡者数を示している。一番上が80代以上で、一番下が10歳未満という形で年代別に発生件数が示されている。

 この間の感染者は1060人で、死亡者は149人となった。

 30代から感染者が増え始め、70代が最も多い。死亡者も60代以降から多くなっているが、感染症での死亡が一般的には少ない20代以降の若年層でも死亡者が発生していることは、この感染症の怖さと言えるかもしれない。

 人食いバクテリアは、致死率が3割という報道もあるが、日本の状況では致死率は14%と計算できる。ただし、このデータには、届出後に亡くなった人は含まれていないため、2024年の致死率は「最低でも14%」と考えるべきだろう。

 最初期の新型コロナ感染症の致死率を統計から確認すると、80代以上で約8%だった。それと比べるとかなり致死率が高いと分かる。

 海外の研究によると、約7割が何らかの基礎疾患を抱えていると報告されている。その内訳として最も一般的なのは糖尿病で約4割、続いて心疾患が3割弱、肥満が2割強。一方で、全体の約3割は特にほかの病気を抱えていないと見られる。比較的健康な状態の人でも発症するため事前に予防することが難しい、厄介な感染症だ。

 また、感染症は体の内部の筋膜を侵すので、傷がきっかけになることも多いが、必ずしも傷がなくても発生することがある。例えば飛沫感染で喉に細菌がついて喉が腫れ、風邪が悪化していくような形で劇症型になるという可能性もある。

 発生メカニズムはいまだに謎に包まれているのはこの病気の不気味なところだ。誰が感染し、どこで感染するのかが見えづらいからだ。

 最大の特徴と言えるのは、原因となる細菌がごくありふれた細菌であるところだろう。