副鼻腔炎の治療は進歩している(2)新たな治療機器の登場で痛みが少ない手術が可能に

AI要約

慢性副鼻腔炎は、鼻水や鼻詰まりの症状を引き起こす病気で、進行すると嗅覚障害や呼吸器疾患リスクがある。

治療は抗生物質やマイクロデブリッターを用いた内視鏡手術が一般的で、手術は安全性が向上している。

内視鏡手術の負担額は約20万~30万円であり、重症の患者は医師と相談して適切な治療を選択すべきだ。

副鼻腔炎の治療は進歩している(2)新たな治療機器の登場で痛みが少ない手術が可能に

 慢性副鼻腔炎は、しつこい鼻水や鼻詰まりの症状に悩まされる病気だ。進行すると嗅覚障害、喉に流れ落ちた鼻水によって喘息や気管支炎を起こすリスクがある。どういった治療があるのか? 東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室教授の鴻信義氏に聞いた。

「慢性副鼻腔炎の治療は保存的治療と外科的治療があり、ペニシリン系の抗生物質を1~2週間処方したり、同系よりも作用がおだやかなマクロライド系の抗生物質を3~6カ月服用すると、7~9割の方は症状が改善されます。ただ、長年放置された重症の慢性副鼻腔炎や好酸球性副鼻腔炎は、薬での治療が難しい。日常生活に支障を来している場合には手術が検討されます」

 かつての副鼻腔炎の手術といえば、局所麻酔で上の歯茎を切り、ノミで上顎骨を削って患部を露出させ、たまった膿や粘膜を取り除く手法が一般的だった。削る音に加えて、医師は額帯鏡を頼りに手探りで行っていたため周囲の神経に触れやすく、副鼻腔炎の手術は「怖くて痛い」といった負のイメージが広まっていたという。

 しかし、近年は高画質な内視鏡や支援機器の登場で、安全性が高い鼻からの内視鏡手術が行えるようになっている。

「内視鏡手術では、鼻の穴から『マイクロデブリッター』と呼ばれる機械を挿入し、先端に付いた高速回転するカッターで粘膜や膿を削りながら吸引します。手術時間が短縮でき、患者さんが感じる痛みも減ります。ただ、副鼻腔は目の奥や頭と隣接していて、器具の方向を誤って深く挿入すると眼球の筋肉を傷つけて目の動きが悪くなったり、髄膜炎を引き起こすリスクがある。手術前にあらかじめ撮影したCT画像のデータからマイクロデブリッターの位置をリアルタイムに把握できる『ナビゲーションシステム』を併用しながら手術を行うことで、そういったリスクが回避できます」

 内視鏡手術は基本的に全身麻酔で行われ、手術時間は約2~3時間だ。90歳を越えていても全身状態が良好で麻酔に耐えられると判断されれば手術は可能だという。

 気になる内視鏡手術の一般的な負担額は、3割負担で約20万~30万円。薬物療法で効果がなく、生活に支障を来しているなら一度医師に相談するといい。