キャッシュフローが悪く、膨大な初期投資が必要で、大規模資本しか参入できない……それでも「クラフトウイスキー」蒸留所が“10年で10倍”に増えた理由

AI要約

日本におけるクラフトウイスキー文化の根付きと、各地の小規模蒸溜所による個性豊かなウイスキー造りの現状が紹介されている。

クラフトウイスキーの定義や、日本におけるクラフトウイスキー蒸留所の急増による多様性と地域活性化への期待が述べられている。

1960年代から始まったクラフトムーブメントの背景や、アメリカでのクラフトビールブームが日本にも影響を及ぼした経緯が記されている。

キャッシュフローが悪く、膨大な初期投資が必要で、大規模資本しか参入できない……それでも「クラフトウイスキー」蒸留所が“10年で10倍”に増えた理由

〈《マッカラン・ラフロイグ・ジョニーウォーカー…》いまや輸出金額は1兆円超! “スコッチウイスキー”が世界で人気を博し続ける“知られざる理由”〉 から続く

 日本にクラフトウイスキー文化が根付いて15年超。現在では各地の小規模蒸溜所において個性あふれるクラフトウイスキー造りが行われている。独特な香りと味わいに舌鼓を打った経験のある人も少なくないだろう。しかし、そもそもクラフトウイスキーとは何なのかを説明できるだろうか。また、日本にはどのような蒸留所があるのかをご存知だろうか。

 ここでは、若鶴酒造株式会社代表取締役社長であり、三郎丸蒸留所のマスターブレンダーとしてウイスキー造りに取り組む稲垣貴彦氏の著書『 ジャパニーズウイスキー入門 現場から見た熱狂の舞台裏 』(角川新書)の一部を抜粋。国内外で評価を受けるウイスキー蒸留の背景について紹介する。(全2回の2回目/ 1回目 を読む)

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 近年、クラフトウイスキー蒸留所が急増し、日本で盛り上がりを見せています。これらの蒸留所は簡単に言えば、自前で本格的なウイスキーの製造設備を保有し、それぞれの地域に根付いて独自のウイスキーを原酒から造ろうと志す蒸留所のことです。

 クラフトウイスキー蒸留所が成長することで日本のウイスキーに多様性がもたらされ、地域の活性化にも大きな役割を果たすことが期待されています。

 ここからは、クラフトウイスキーとは何か、そして日本にどんなクラフトウイスキー蒸留所があるのかを見ていきます。

 みなさんはクラフトという言葉にどんなイメージをもっていますか? 英語のクラフト(craft)は「手工業」や「職人的技術」「技能」といった意味なので、クラフトウイスキーと聞けば、なんとなく小規模の設備で職人的な製造者によって造られるものというイメージを持たれるかもしれません。

 もともと「クラフト」のムーブメントは、1960年代中頃にアメリカの西海岸で始まっています。それが1980年代に本格化し、アメリカにおいてはクラフトビールのブームが拡がり、その流れが日本にもたらされました。