筋トレで力を振り絞るよりずっと効果的…脳神経が活発化し、寝たきりも防げる1回10秒の簡単ストレッチ

AI要約

片足立ちの重要性とその方法について解説。

運動神経の維持が健康長寿につながる理由。

大腰筋の重要性と体の深部筋肉の活性化について。

■運動神経を維持すれば健康長寿に役立つ

 あなたはフラフラせずに30秒間、片足で立つことができるだろうか?

 50歳を超えると片足立ちができなくなる人が多いという。原因は筋肉の減少というよりも、体が硬くなること。実際にやってみるとわかるが、片足立ちは足だけで立とうとするより、みぞおちから下を動かすようなイメージで、足をぐっと持ち上げるほうがバランスが取りやすい。腰まわりが硬くなると、この足を持ち上げること自体が難しくなるのだ。

 「片足で立てない人は運動能力も低下しているはず。投げる、走るなど、スポーツは片足の連続です」

 と、アスリートから80代の高齢者まで幅広くサポートしてきたトレーナーの鈴木亮司氏は説明する。

 「運動が不得手で片足立ちをするのが怖い人は、腰をくるくる回せるかどうかで確認してもかまいません。片足立ちや腰回しがスムーズにできない人は体が硬い黄信号。猫背や腰痛などの症状もあるなら、それは体の機能が低下していることの現れです」

 では、どのようなトレーニングをすると若々しい体を維持できるのか。体の衰えを感じたとき、筋トレに励む人もいるだろう。もちろんそれも間違いではないのだが、血管や関節への負荷が大きくなる。鈴木氏はかつて厳しい筋トレで体を壊した。

 「以前は格闘家でしたのでバーベルを持ち上げるなど、常時体に力を入れる練習をし、体のどこかがすぐ壊れる状態でした。ついには眼窩底骨折(眼球周囲の骨折)まで起こしてしまい……。筋トレの代わりにさまざまな軽い体操を始めたのです。すると、体の動きが良くなりました。スポーツで失敗したときに『力が入りすぎた』とよく言いますよね。運動神経の良さは、力を入れて頑張るのではなく、上手に力を抜くことだと実感しました」

 現代の日本人は力を抜いた動作を「サボる」と捉えがちだ。肩の力を抜いて楽しむような運動習慣がないため、「力を抜いて動作することが苦手な人が多い」と鈴木氏が指摘する。

 「従来のトレーニングの多くが『力を振り絞る』『気合を入れる』といった緊張を要求するものでした。そのため日本人は力んで頑張ることがトレーニングだと信じきっている。しかし、本当の力を発揮するときには力んではダメなのです」

 鈴木氏は体の深部の筋肉「大腰筋」の力を重視する。

 「“体幹”は頭部と手足を除くすべてを指すことが多いのですが、大腰筋は上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉。足を動かす大本のエンジンです。ところが大人になると体を動かす機会が減って、大腰筋の衰えが始まる。歩くのが遅くなったり、姿勢が悪くなる、バランス力が低下するなどの症状が現れ、寝たきりの原因になることも研究でわかっています。反対に大腰筋を使うことで腰痛や肩こりが治り、寝たきりになりにくくなるのです」

 東京大学と島津製作所の共同研究で、大腰筋を含む体の深部の筋肉を動かすと、脳神経が活性化することも報告されている。鈴木氏が2つの体操を紹介してくれた(図表1)。

 「筋肉は放っておくと縮み、伸びなくなっていきますが、この2つのポーズで縮こまりやすい胸とおなかの筋肉が広がり、背中の緊張がゆるみ、大腰筋の機能も高まります。ゆるめた後は鍛える方法もあるのですが、ひとまずこの基本の2つで大腰筋を使えるようになると、体全体が柔らかく動くようになり、どんな運動をするときも手足の力に頼らず、効率的な良い動きができるようになるのです」