「徹夜で勉強」に意味がない理由とは? 「記憶」に悪影響なだけではなく認知症リスクまで拡大

AI要約

徹夜勉強は睡眠不足を招き、脳の機能低下や認知症リスクの上昇につながる。

睡眠不足で脳の前頭葉の働きが低下し、記憶定着や論理的思考能力が減少する。

定期的な睡眠と毎日の学習が最も効率的であり、睡眠不足は認知症リスクを高める可能性がある。

「徹夜で勉強」に意味がない理由とは? 「記憶」に悪影響なだけではなく認知症リスクまで拡大

 学生時代、試験前に一夜漬けをしていた人は多いだろう。それで結果が出た、という人もいるかもしれないが、睡眠の観点から見ると、この勉強法は「まったくおすすめできない」という。それはなぜか。

 シリーズ累計145万部の「超基本」シリーズ最新刊で、睡眠研究の第一人者・柳沢正史氏が監修した『今さら聞けない 睡眠の超基本』が、徹夜が脳に与える影響を詳しく解説している。本から引用する形で紹介したい。

■徹夜後の脳=酒に酔った状態?

 徹夜したときの脳の働きは、「アルコールが血中に0.1%含まれる状態と同等」の状態。つまり、徹夜明けで試験を受けたり仕事をしたりするのは、酔っ払った状態で答案に向き合ったり契約書をつくったりしているのと同じことだ。成果を上げようしても、よい結果が得られる可能性は低いだろう。

 睡眠不足は論理的な思考を司る脳の前頭葉にさまざまな影響を与える。注意力や集中力の低下、論理的思考能力の減少、感情の制御が難しくなる、不安やイライラ感が増加する、といったことから、食欲の増加、高カロリーなものが食べたくなるといったことまでその影響は多岐にわたる。

 記憶の整理や定着は睡眠中に行われるため、一夜漬けをしても勉強した内容を記憶することはできないし、脳の機能の低下で、これまでに学習した情報も引き出せなくなる。徹夜で頑張っても、結果にはにつながりにくいのだ。

 さらに心配なのは、最近の研究で、一晩の徹夜でも認知症の原因物質がたまってしまうことがわかってきたことだ。

■認知症が進行すると考えられる「アミロイドβ」

 アメリカの国立アルコール乱用・依存症研究所などの研究グループは、22~72歳の健康な男女20人を対象に、徹夜後の脳内の「アミロイドβ」量を測定。一晩の徹夜でも脳内のアミロイドβ量が5%増加することがわかったという。アルツハイマー型認知症では、脳内で神経細胞が死滅して脳の萎縮が進行すると「老人斑」と呼ばれるアミロイドβが固まったものが現れる。これが蓄積することで認知症が進行すると考えられている。

 アミロイドβは、タンパク質の一種で脳内の老廃物。睡眠によって多く洗い流されるので、徹夜や睡眠不足の状態が続くと、アミロイドβが十分に排出されずに脳内で増加し、認知症リスクが高まる可能性がある。

 実際、アメリカのタウブ研究所で実施された65歳の非認知症者1041人を対象としたコホート研究(ある共通の特性を持つ集団とそうでない集団のグループをつくり、一定期間追跡して、どのような変化が起きるかなどを観察し、その特性との関連を明らかにしようとする研究)で、睡眠不充足により、認知症のリスクは4倍に上昇することが明らかになっている。

 結局、最も効率のよい勉強法は、日中に毎日コツコツ積み重ねてよく眠ることだし、年齢にかかわらずしっかり眠ることが、認知症のリスクを下げることにもつながるということだ。

(構成 生活・文化編集部 上原千穂)