素直にミステリーだと思って観てはいけない! 突っ込みどころ満載の、ダークなコメディ作品。

AI要約

25年前に起きた、謎の失踪事件。ポッドキャスターたちが真実を追い求めるためにアイルランドの田舎町に集まる。

町の住人たちが隠している秘密、25年前の失踪事件の謎、そしてポッドキャスターたちが巻き込まれていく展開。

奇妙な田舎町の住人たちとポッドキャスターたちの成長物語。意外な結末によってユーモアが浮かび上がるスリラーコメディ。

素直にミステリーだと思って観てはいけない! 突っ込みどころ満載の、ダークなコメディ作品。

25年前に起きた、謎の失踪事件――。真実を追い求め、ポッドキャスターたちがアイルランドにある海沿いの田舎町「ボドキン」に集まった。

冷やかな視線、妨害行為、まるでタブーのように話したがらない住人たち。この町全体が、何かを隠している……!?

「一日のうちに四季がある」と言われるほど天候の変わりやすいアイルランドを舞台に、ダークでコメディな作風でありながらも、想像の斜め上をゆく展開で緊張感を与え続けるスリラー仕立て。一見平和な田舎町の暗部が、次々と明らかにされてゆく――。

ジャーナリストのダヴは、追っていた政府絡みの不正事件の情報提供者が自殺してしまい、職を失いそうになっていた。そこで上司は、社内でポッドキャスト番組を持つギルバートと、リサーチャーのエミーと共に、ダヴの故郷でもあるアイルランドに行き、事態が収束するまで番組制作を手伝うように命じた。

プロデューサーであり、語り手でもあるギルバートは、25年前のサーウィンの日、まったく無関係の3人が失踪した事件を題材にするという。ハロウィンの原形とも言われる、古代ケルトの祭りサーウィン。死者の霊が家族のもとに戻る日と言われており、悪霊まで現世に戻ってきてしまうため、人々は獣の首や藁(わら)で仮装をして悪霊を追い払い、パレードをしながらその年の収穫を祝うという祭りだ。

失踪したのは、フィオナという教師の女性と、名前しかわかっていないマラキという男性、そして名前もわからない少年。住民が集まるパブで聞き込みをしても、当時の巡査長に話を聞いても、なぜだか事件について話そうとするものはいない……。あげく調査中クルマに追いかけられ、調査をやめるようにと脅されるまでに。

はじめは、運転中に楽しめるような、そんな番組にする予定だった。まさか、こんなことになるなんて、誰が予想しただろうか?

ダヴは記者としての観察眼はたけているものの、人付き合いがまるでできない。いつも他人の神経を逆なでし、けんか腰で相手に突っかかる。

ギルバートは、住民と打ち解け合い、信頼を勝ち取ってから取材をしたいと思っている慎重タイプ。一見慎重に取材を行っているように見えるが、悪く言えばマイペースすぎる性格だ。

エミーは、ダヴに憧れ、常にダヴの後についていたが、邪険にされてしまう。3人のなかでは一番社会性を持ち合わせており、おそらくエミーなしではこの番組は成立しないだろう。

謎解きミステリーとして楽しめる部分もあるが、この作品の見どころは、排他的な田舎町の奇妙な住民たちと、癖の強すぎる3人のポットキャスターたちの成長物語だ。

住人たちが証言している内容は、果たして真実なのだろうか? そもそも25年前の事件、証拠など見つかるはずもなく、手掛かりは証言だけ。どうやら真実かを見極めなければならないのは、観ているこちらの役目のようだ。失踪事件を取材に来たはずが、ボドキンの隠された秘密に巻き込まれ、どんどん深みにはまってゆく。そして、自分自身の問題に気づかされることとなる……。

衝撃のラストを迎え、はじめてこの作品のユーモア(皮肉)に気づくかもしれない。万人受けする作品ではないかもしれないが、このブラックユーモアのセンスに引かれる人もいるはず。おそらく、地名をタイトルにしたり、冒頭のジョークから読み取るに、コーエン兄弟の『ファーゴ』から着想を得たのではないだろうか。

決して素直にミステリーだと思って観てはいけない、突っ込みどころ満載の、れっきとしたコメディ作品だと思って観ることをオススメする。『ボドキン』はNetflixにて全7話、配信中。

Text:Jun Ayukawa

Illustration:Mai Endo